避けられない「辞任ドミノ」で問われる岸田政権中枢の結束力11月11日、辞任前に閣議に臨む法相、葉梨康弘(右)。左は次々とずさんな政治資金の処理が暴露された総務相の寺田稔 Photo:JIJI

 首相、岸田文雄の足元が大きく揺れる。前経済再生相の山際大志郎に続き、法相の葉梨康弘の更迭に踏み切った。わずか半月余での2人の閣僚交代が政権運営に及ぼす影響は極めて大きい。もともと岸田は元首相の安倍晋三、前首相の菅義偉とは違うソフトなイメージが国民に歓迎されていた。そのことは支持率の高さもさることながら不支持率の低さが証明してきた。

 ところが、直近の世論調査では、支持率の低下とともに不支持率の上昇が止まらない。中でも深刻なのはNHKの調査。内閣支持率が33%で、自民党支持率の37.1%を下回ったのだ。自民党支持者の岸田離れをうかがわせる。自民党幹部の岸田評も厳しい。

「いい人そうに見えるけど、実行力、決断力がないと映っている」

 山際、葉梨の更迭劇も後手後手の対応を重ねた。

「(法相は)死刑のはんこを押すときだけニュースになる地味な役職」

 葉梨発言があったのは11月9日夜の政治家パーティー。どう見てもレッドカードによる一発退場だった。現にその夜のうちに波紋は政界全体に広がった。自民党執行部の一人も危機感を募らせた。

「野党は黙っていない。早く更迭をしないと駄目だ。持たない」

 しかし、岸田は発言翌日の10日には動かず。その夜には麻生太郎内閣の元官房長官で、政界を引退した河村建夫の傘寿(80歳)を祝うパーティーが官邸近くのザ・キャピトルホテル東急で開かれた。自民党副総裁の麻生も出席し、立すいの余地がないほどの出席者で埋まった会場には、葉梨の舌禍問題への危機感はみじんもなかった。