血の雨が降る衆院の候補者調整が岸田政権に絶好の機会である理由首相の岸田文雄に総務相の辞表を提出し、記者団の質問に答える寺田稔氏(中央) Photo:JIJI

 わずか1カ月間に起きた3閣僚連続更迭劇。異常事態というほかはない。首相の岸田文雄が更迭に踏み切ったのは経済再生担当相の山際大志郎、法務相の葉梨康弘、総務相の寺田稔。いずれも内閣の柱というべき重要な閣僚だ。しかもなお政治とカネを巡って進退問題に直面する復興相の秋葉賢也が残る。

 臨時国会の会期は12月10日まで。焦点の世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を巡る被害者救済問題、防衛力抜本強化策の取りまとめなど重量級の課題が山積。さらに国会閉会後には2023年度の予算編成作業が待ち受ける。どうひいき目に見ても先行きの展望は見えてこない。

 岸田の置かれた状況がどれほど厳しいのかは過去の事例からも明らかだ。約1カ月間に3人の閣僚が交代した例が1度だけある。昭和から平成への橋渡しを担った竹下登内閣だ。1988年12月に副総理兼大蔵相の宮澤喜一、法相の長谷川峻、昭和天皇のご逝去を受け「平成」に元号が変わった直後に経済企画庁長官の原田憲が辞職した。いずれも吹き荒れたリクルート問題に絡んでの辞任だった。

 竹下は昭和天皇の「大喪の礼」を終え、4月1日の消費税導入を見届けて退陣を表明した。その後も第1次安倍晋三政権、旧民主党の野田佳彦政権も閣僚の連続辞任で体力を消耗して崩壊した。岸田もこうした前例を見れば極めて危うい状況にあるといっていい。