寝ているときに脳はもっとも効率よく働く
脳に睡眠が必要な理由を順に見ていきましょう。
眠っている状態は、見た目も感覚も、疲れきってちゃんと働けなくなり、休まざるを得なくなった状態にとてもよく似ています。眠ると人間はほとんど動かず、顔の力も抜けて、なにも考えていないように見えます。まわりの状況を感知する聴覚、触覚、視覚などの能力も低下します。ところが、体と脳は決して休んでいるわけではありません。
まだわたしたちが眠る理由を正確に説明できる人はいませんが、いくつかの生命機能が睡眠中に調整されることは明らかです。アメリカ医学研究所は、成人が睡眠不足になると、高血圧や糖尿病、肥満、うつ病、心臓発作、脳卒中のリスクが増えること、シカゴ大学は、健康な若い男性でも、11日間睡眠が減っただけで糖尿病前症が見られたり、ヒト成長ホルモンの分泌レベルが低下することを証明しました。
脳がもっとも効率よく働くのも、睡眠中であることがわかっています。睡眠不足の脳は書類が山積みの散らかった机のようで、今にも崩れそうな状態です。これでは一番大事な情報がどこにあるのかなかなか思いだせないだけでなく、情報が見つかってもタイミングよく活用できません。
脳は寝ているときに、起きているあいだの出来事をコード化し、整理して定着させます。よく眠った翌朝、頭がさえてすっきりするのはこのためです。1日分の情報が正しい場所に分類され、効率的に検索したり、利用できるようになるのです。
赤ちゃんだって同じことなのです。
赤ちゃんが睡眠不足になったときでも集中力がどれほどつづくのか、その時間の変化を直接調べた人はいませんが、わたしは仕事柄、睡眠不足のために集中できなくなっている赤ちゃんを数えきれないほど見てきました。
そんなとき、赤ちゃんはどのような状態になっていると思いますか。