植草氏の結婚相談所でも会員同士のデートはリモート形式になることが増えた。画面を通してのお見合いは互いの魅力が伝わりにくく、スムーズに運ばないこともあるという。さらにコロナ禍の閉塞感によって、会員自身が『引きこもり』気味になることも少なくないようだ。
「リモート中心の生活になって1年以上誰とも会話していないという男性が入会されたのですが、顔色は悪く、不規則な生活を送っているため体形管理もできていない。第一印象としてはマイナスになってしまいます。女性会員さんでも、誰にも会わないから家では一日全裸で過ごしているという人がいました。人と接していないから声のボリュームがわからない、日常に変化がないから特に話すこともない、という人も多い。ここまでくると、ほとんど引きこもり状態ですよね」
清潔感の無さやコミュニケーション能力の低さは、婚活市場においては明らかに不利となる。デートがうまくいかないことが続くと気持ちは沈み、さらに家族や友人など人と会う機会が減っていることが自己否定に拍車をかけてしまうようだ。
「婚活を続けていると、就活を思い出すんです。遠回しに断られるたびに、ダメ人間の烙印(らくいん)を押されているようで。自分は結局、誰にも必要とされていないんだ、という気持ちでいっぱいになって、最近は何もやる気になれません。誰かに相談したくても仕事は完全リモートだし、友人ともコロナで会いにくくなってしまって、孤独を感じることが増えました」(アヤコさん・事務職、35歳)
とはいえ、コロナ婚活がマイナス面ばかり、というわけではない。植草氏の相談所では、リモートデートを重ね、一度も対面で会うことなくプロポーズが成功したケースもあるという。
「リモートワークの普及により、例えば都内の企業勤務の男性が女性に合わせて大阪に引っ越し、ということもできるようになりました。居住地を限定せずにマッチングできるのは大きな変化。また外食しにくいことを理由に、自宅デートで距離を縮めた会員さんもいます」