学問の功利性マップ=就活楽勝度マップ
次の図は、個人が「雇用される能力」(エンプロイアビリティ=Employability)について、「大学で学んだ内容(学部・学科)」と、大学のランキング(その分野での有名・無名)で、マッピングしたものだ。「学問の功利性」を示している。ありていにいうと、新卒・第2新卒含むポテンシャル採用期(≒20代)における“就活楽勝度マップ”である。
横軸の「学問の功利性」は高い順に右から5つに分類している。やはりデジタルIT系が圧倒的な第1列で、コンピューターサイエンスを中心として、統計学、数学、論理学などの素養を持つことを示す。いわゆる形式科学(formal sciences)群であり、ようは、プログラミング言語をはじめとする「ツール」に明るいことを示す。ITエンジニア、データサイエンティストの即戦力候補だ。
医療系が第2列である。職業に直結した実学(Professions)が中心で、大卒でも短卒でも専門卒でも、就職率100%が当たり前。ただ、すでに学部選択の時点で、就職までルートが決まっており、モラトリアムはない。その大半は病院であり(医師、看護師)、薬剤師の場合は、薬局が半分くらい入ってくる。少なくとも、「団塊の世代」が亡くなる2045年くらいまでは需要が伸びるので人手不足が予想される。
この2つの列を別格として、原則として第3列が自然科学系と応用科学系および経営・国際領域となる。これは雑多ではあるが、ITと医療以外で、最も市場ニーズが高い分野(研究開発、環境、国際、経営)、ということである。
第4列は、社会科学系が中心となり、企業への採用では少々、弱くなる。社会学や政治学の学問体系や知識は、仕事上では役に立たないので、ポテンシャル採用となる。直結するのは、一部の「○○総研」など、ごく限られる。筆者は政治学・政策過程論を専攻しており、ゼミが「アメリカの政治」だから、政治部志望で新聞記者という、実に細い道を目指した限定的な就活だった。ゼミの先輩後輩を見ても、メディアや総研が目立つ。
第5列が、人文科学系が中心で、これは「一般教養」の世界で、最も実学から遠く、企業で直接役立つことはない。日本文学に詳しかったり、キリスト教への理解が深いと、グローバル人材としてはコミュニケーションに役立つので、ダブルメジャーで経営やITとセットで学ぶと、企業側からのニーズは高まる。単独では苦しい。
縦軸は、大学の難易度で並べた序列である。日本の大学は国際的な評価が低く、グローバルでみた卒業生のエンプロイアビリティ(雇われる力)は劣る。東大合格者がいちばん多い開成高校では、コロナ禍の影響がまだなかった2020年、海外大に延べ36人が合格し、イェール大2人をはじめ計10人が進学した、と公表。渋幕(渋谷教育学園幕張)も2022年、医学部132人・東大74人に対して海外大34人が合格したと公表しており、海外大進学はすでに珍しくない。都立国際高校に至っては、2021年度121人が海外大に合格し、2年で倍増(2019年度は61人)と、地殻変動が起きている。
この海外大を最上位として、こちらも5つのグループに分けた。
(本記事は『「いい会社」はどこにある?──自分だけの「最高の職場」が見つかる9つの視点』の本文を抜粋して、再編集を加えたものです)