「ドイツでは、フェアアイン(Verein)と呼ばれる非営利法人が運営する地域のスポーツクラブが、子どもたちのスポーツを楽しむ場として地域に根付いています。スポーツを楽しんだ後は、クラブハウスで飲食を伴った会話を楽しみ、地域の人々がつながる“社交”の場として大きな役割を果たしています」

 釜崎氏はこのように説明する。釜崎氏によると、ドイツの学校では、日本の部活動に相当する活動はないそうだ。

 地域のスポーツクラブには子どもから高齢者まで幅広い年代の人々が参加している。中には「クラブハウスで飲食やおしゃべりを楽しむためだけに来る人もいます」と釜崎氏は話す。

「サッカーやテニスといったスポーツだけでなく、チェスや音楽などの文化的な活動を行うフェアアインもあります。ドイツのスポーツ選手たちのほとんどが地域スポーツクラブの出身ですが、トップ選手のためのカテゴリーから楽しく汗を流したい人たちが所属するカテゴリーまで、一つのフェアアインの中で目的に合わせたチームがあるのも特徴です」

 フェアアインが運営する地域スポーツクラブでは、地域住民が指導を担うので費用も安いという。釜崎氏が事例調査で訪れた「TuSモイツフェルド1961」では、学生の月会費は6ユーロ。日本円で900円ほどだ。

「ドイツでは『大きな屋根の下にともに集まる』という表現があります。モイツフェルドは6000人ほどの小さな村ですが、『TuSモイツフェルド1961』には1000人を超える会員がいます。人数が多いので、財源も安定しているんですよ」

 地域に支えられて子どもたちのスポーツ権を保障しているフェアアインの形を日本に導入することは、部活動の地域移行を進める日本にとってもメリットは多そうだ。