「あれ? いま何しようとしてたんだっけ?」「ほら、あの人、名前なんていうんだっけ?」「昨日の晩ごはん、何食べんたんだっけ?」……若い頃は気にならなかったのに、いつの頃からか、もの忘れが激しくなってきた。「ちょっと忘れた」というレベルではなく、40代以降ともなれば「しょっちゅう忘れてしまう」「名前が出てこない」のが、もう当たり前。それもこれも「年をとったせいだ」と思うかもしれない。けれど、ちょっと待った! それは、まったくの勘違いかもしれない……。
そこで参考にしたいのが、認知症患者と向き合ってきた医師・松原英多氏の著書『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』(ダイヤモンド社)だ。
本書は、若い人はもちろん高齢者でも、「これならできそう」「続けられそう」と思えて、何歳からでも脳が若返る秘訣を明かした1冊。本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、脳の衰えを感じている人が陥りがちな勘違いと長生きしても脳が老けない方法を解き明かす。

【91歳の医師が明かす】<br />“気持ちいい習慣”が認知症のリスクを劇的に下げる「驚くべき根拠」イラスト:chichols

③30分未満の昼寝をする

【前回】からの続き 睡眠が足りないときには、30分未満の昼寝をするのが有効です。眠気がとれて、脳も身体もアクティブに動かせるようになり、安眠へとつながります。30分以上の昼寝をすると、夜眠れなくなりがちです。それは、「睡眠圧」(眠気)が下がるからです。

30分未満でも、夜の眠りに響かないように、午後3時以降の昼寝は控えるようにしたほうがいいです。

30分未満の昼寝をする人は、認知症のリスクが下がるという報告もあります(新潟大学教育研究院医歯学系医学系列の中村和利教授らの研究)。この研究では、新潟県小千谷市に住む65歳以上の高齢者で、認知機能が正常と判定された371人を5年間追跡調査。医療機関で認知症と診断されていた18人も解析の対象としました。

5年後には27.3%の106人に、認知機能の低下が見られました。そして昼寝の習慣がない人と比べて、30分未満の昼寝の習慣がある人の認知機能低下のリスクは、半分以下に抑えられていたそうです。おそらく30分未満の適度な昼寝で、夜の眠りが深くなり、アミロイドβ(異常たんぱく質)が排泄されやすくなったのでしょう。

④夕方以降は強い光を
 できるだけ浴びない

日が落ちて暗くなったら、それ以降は間接照明などをうまく活用しながら、できるだけ強い光を浴びないようにしましょう。眠りを誘うホルモンの「メラトニン」は、睡眠や食欲を調節する脳内の神経伝達物質「セロトニン」から合成されます。

セロトニンからメラトニンをつくる酵素は、あたりが暗くなるとスイッチが入り、メラトニンの合成を始めます。ところが、強い光を浴びると酵素のスイッチが切れてしまい、メラトニンの合成にブレーキがかかるのです。

ただし、暗くした部屋でもテレビやスマホ、タブレットなどを見ていると、目に強い光が入り込んできます。暗闇だと光の刺激を強く感じるようになり、メラトニンの分泌が減る恐れもあります。【次回に続く】

※本稿は、『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』より一部を抜粋・編集したものです。(文・監修/松原英多)