「現場レベルでは、2018年ごろから『平屋人気』を多く耳にするようになりました。特にこれまでメインだった高齢者世代ではなく、20代や30代の若いファミリーから注目度が高くなっているように感じます」

 そう話すのは、建築関係の書籍や雑誌を主に扱うエクスナレッジの編集者、久保彩子さんだ。ここ数年、住宅関連書籍は全体的に売り上げが好調で、久保さんの担当した『すごい平屋』は建築系書籍としては異例の5万部を超えるベストセラーとなった。

 久保さんは昨今の平屋人気を、ステイホームの影響だと分析する。

「ひとつにステイホーム期間やリモートワークなどの働き方を経験して家での過ごし方、マイホームの在り方を改めて考える機会が増えたことが要因かなと思います。特に都心部で働く人は、コロナ前には職場近くのマンションを検討していたが、リモートワークが一般化したことで、『郊外でもいいのかも』『郊外ならもっと広い土地に地面に近い平屋を建ててもいいのかも』など、選択肢が広がったのだと思います」

 働き方の多様化は、マイホームの理想像をも変えつつある。人気に伴い、最近はハウスメーカーでも、デザイン性の高いおしゃれな平屋プランを用意するところが増えてきているという。

 平屋人気は都市部に通勤するビジネスパーソンのみならず地方でも始まっている。

「地方に住む人は先祖代々の土地を持っていることが多く、そこにゆとりのある新築住宅を建てるのが一般的です。しかし最近ではそれも希薄になり、コンパクトかつ暮らしやすさを重視する流れに変化しつつあるようです。平屋と聞くと広い敷地を存分に生かして建てるイメージがあるかもしれませんが、ここ数年は家事のしやすさ、家族間のコミュニケーションの取りやすさなどを重視して、敷地面積を使い切らずに、あえて小さな平屋を建てるケースも増えています」

 大家族が一つ屋根の下で、という時代とは違い、少子化、核家族化が進んだ現代では、子供が巣立った後は夫婦二人生活ということは珍しくない。将来的なことも考えて、大きな新築住宅を建てるというマイホーム願望は薄くなっているようだ。