●黒幕はなぜ黒いのか?
映画やドラマで犯人と思っていたら、さらに後ろで糸を引いていた人がいた。裏で大きな影響力をもつ「黒幕」。
この言葉も歌舞伎用語です。黒幕は夜を表すもので、背景に黒幕が張られると夜の場面に転換したことを示します。また、黒幕には小さなサイズのものもあり、舞台で死んだ人を消すために登場してきて、そのまま役者と一緒に消えるときにも使います。黒幕は観客には見えない存在であり、芝居を陰でつくる役割があります。
そこから転じて、舞台裏から影響力をもつ興行主などの存在を「黒幕」と呼ぶようになりました。黒幕の黒は「見えない」という意味であり悪い意味ではなかったのですが、黒のイメージもあり、今では悪役の象徴になりました。
行事と色の由来
黒い日/白い喪
●韓国にある黒い日
韓国ではブラックデーという記念日があります。これはバレンタインデーとホワイトデーで恋人ができなかった男女が、4月14日に黒い服を着て集まり、黒い韓国風ジャージャー麺(チャジャンミョン)を食べるという慣習です。恋人がいない暗い気持ちを黒にたとえて、黒いものを食べてしまおうというユーモアをこめているようです。またフリーであることをアピールする一種の出会いの場になっているともいわれています。
●黒の喪服は白だった
『日本書紀』の時代、喪服は白でした。ところが平安時代になると墨染めの色を着用するという定めにより、黒の喪服を着るようになりました。平安時代の『源氏物語』にも喪服として濃い墨染めの服が登場します。
そして室町時代には喪服は白に戻るのです。江戸時代の喪服は白の裃(かみしも)、女性は白無垢の小袖に白帯を着るのが一般的でした。明治30年に英照皇太后の大葬が行なわれたとき、世界から国賓が参加することを受けて、政府は西洋風の葬儀を導入したといわれています。そのときに参列者はヨーロッパの葬儀で一般的だった黒の喪服を着用したといいます。
その後、日清・日露戦争時代、葬儀が増えて貸衣装屋が黒い喪服を貸しだすようになり、黒い喪服が一般的になったといわれています。