嫌な相手から逃げても
どこで再会するかわからない
私は、別の理由で逃げないほうがいいと思っています。苦手だと思って避けた人と、この先どこかでばったり顔を合わせる可能性も、なくはないからです。
例えば、タクシーの運転手さんに偉そうな口をきいたり、飲食店で店員さんに失礼な態度を取ったりする人がいます。自分は客だから偉いんだとでも言わんばかりです。
また、ときどき電車の中で化粧をしている女性を見かけます。本人は、車内に知り合いはいないし、誰も自分を気にしていない、と思っているのかもしれません。
しかし、こういう人たちは「想像力」が欠けています。失礼な態度をされた相手はもちろんですが、こういう光景を見て、苦々しく思っている人もいるかもしれません。そうやって自分が不快にさせた相手やその場に居合わせた人々と、再び顔を合わせる機会がないとは言い切れないのです。会社の面接に現れるかもしれないし、新たに異動する上司になるかもしれない。フィアンセの両親になるかもしれない……。
びっくりするようなことが起きるのが人生です。逃げたつもりが逃げ切れず、かえって気まずくなることもある。だから、逃げないほうがいいと思うのです。
一方で、人間関係において「これは逃げ出さなければ自分が危ない」と強く感じたなら、さっさと逃げたほうがいいと思います。関わりをできるだけ断つ。異動願いを出す。思い切って会社を離れる。
自分の心を病んでしまってまで、付き合わなければいけない理由はありません。できるだけ逃げない。でも、逃げるべきときには逃げる。その見極めが重要です。
何とかうまく付き合おうと
前向きに努力する
できるだけ逃げてはいけない理由にはもうひとつ、逃げていたらきりがない、ということもあると思います。ちょっと嫌だな、と思うと逃げたくなってしまう。そして、逃げ出してしまう。実際、人間関係を理由に、会社を転々とする人もいます。逃げることは癖になってしまいかねない、ということです。
苦手な人は、誰にでもいます。では、多くの人が苦手な人をどうしているのかというと、何とかうまく付き合おうと努力しているのです。誰とでもうまくやれる人もたしかにいますが、彼らが何の努力もしていないかというと、まったくそんなことはない。彼らとて、我慢もするし、耐えているし、前向きに努力しているのです。