黒田総裁による修正措置の内容を検証すると

 12月20日に公表された「当面の金融政策運営について」の冒頭、日銀は「緩和的な金融環境を維持しつつ、市場機能の改善を図り、より円滑にイールドカーブ全体の形成を促していくため、長短金利操作の運用を一部見直すことを決定した」と記した。その背景には、わが国の物価上昇への対応と、国債市場の流動性低下などへの配慮がある。

 現在、わが国の消費者物価指数は2%を上回って推移している。年明け以降も物価は追加的に上昇しそうだ。背景にはいくつかの要因がある。ウクライナ危機などを背景に世界全体で資源・穀物価格は上昇した。世界的な供給不安は続くだろう。また、21年の年明け以降、外国為替市場ではドルなどに対して円安が進んだ。22年8月下旬のジャクソンホール会合終了後から10月中旬まで、日米の金融政策の方向性の違いは一段と鮮明化した。

 1ドル=150円を上回る水準まで、ドル高・円安は急激に加速した。資源などの価格上昇と円安の掛け算によって輸入物価は上昇し、消費者物価は押し上げられた。国債の流通利回り=金利が低下し、長短の金利差も大きく縮小した。海外債券などに比べて予想される利得の小さい日本国債=JGBへの投資を控える主要投資家も増えた。

 物価上昇、市場機能低下を食い止めるために、日銀は政策を一部修正した。ポイントは3点だ。まず、日銀は長期金利の上限を0.50%に引き上げる。短期から超長期までの金利をつないだ「利回り曲線」は市場の実勢にある程度は沿いやすくなる。0.50%を上回る長期金利上昇は抑制される。

 次に、国債買い入れ額は、従来の月間7.3兆円から9兆円程度に増額する。三点目として、10年以外の年限でも買い入れ額は増やされる。具体的に、1年以下、1年超3年以下、3年超5年以下、5年超10年以下、10年超25年以下、25年超の国債買い入れ額は引き上げられる。それによって金融政策と“整合的”と考えられる利回り曲線の形成を“促す”。