重要性高まる今後の日銀スタンスの見極め
今回の部分修正によって、金融市場には相応の影響が出るだろう。まず、金利は上昇しやすくなった。これまでに比べて、外国為替市場で主要投資家は円売りを仕掛けづらくなる。
ドルなどに対して円は、急激ではなく、緩やかに上昇するものと予想される。日銀は漸次的なスタンスで、より望ましいと考える利回り曲線の形状実現を促そうとしている。想定以上に金利上昇圧力が強まれば、弾力的にオペが実施されるだろう。
また、FRB関係者は想定以上に金利は上昇する可能性に言及し始めた。ごく短期の時間軸で考えると日米の金利差拡大観測は再度大きく高まり、一時的に為替レートは円安方向に振れやすい。ただ、その場合、1ドル=150円台などにまで円が急激に売られる可能性は低下している。
いずれにせよ、日銀は実体経済と金融市場に対する大きな負の影響が及ばないように金融政策を修正していくと考えられる。23年4月に黒田総裁は任期を迎える。新しい総裁の下で、日銀は慎重、かつ部分的な異次元緩和の修正を進めることになるだろう。
その取り組みは、かなりの時間を必要とするはずだ。というのも、1999年2月の「ゼロ金利政策」以降、長期にわたってわが国は超低金利環境に浸った。「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」からなるアベノミクスが本格始動すると、政府と日銀はアコードを結び金融緩和はさらに強化された。
その正常化を目指すことは、口で言うほど容易なことではない。あくまでも日銀は時間をかけてオペの運用方針や国債買い入れ額を部分的に修正し、経済全体の安定と金融市場の機能回復に資す形でイールドカーブ・コントロール政策を進めていくだろう。
22年12月の決定会合は、これまで以上に金融政策の運営、修正にとってのイールドカーブ・コントロール政策の重要性の高まりを示唆するものだったといえる。そうした日銀のスタンスを、冷静に、事実(日銀の公表文書や総裁発言など)に基づいて見極める必要性は増している。