政策の一部修正を行った日銀の意図とは

 日銀は、基本的にこれからもイールドカーブをコントロールする考えを変えていない。会見において黒田総裁は、今回の一部修正は「利上げではない。金融引き締めではまったくない」と強調している。「出口戦略の一歩ではない」との発言もあった。黒田総裁の発表を額面度通り受け取ると、わが国の金融政策には変更がないことになる。

 日銀は、経済全体に与える金融緩和の効果が大きく変わらないようにしつつ、新発10年物国債近辺の極度な金利の落ち込みを修正し、国債などの取引増加、物価の抑制を狙ったと考えられる。

 今回の一部修正は、異次元緩和の正常化に向けた一歩であることに変わりはない。懸念されるのは、長期金利の変動幅を拡大することによって、経済や金融市場にマイナスの影響が及びかねないことだ。そのリスク、あるいは経済的なショックは抑制しなければならない。

 日銀短観によると中小企業の業況は不安定だ。長期金利が上昇し、つられるようにして2年債や5年債などの金利も上昇すれば、中小企業の事業運営にマイナスの影響は増えるだろう。住宅ローン金利の上昇など家計にもより大きな打撃が及ぶ。それは避けなければならない。

 日銀はすべての年限を対象に、より円滑な政策効果の発揮を目指してイールドカーブ・コントロールを行うことによって、金融政策の部分的修正と金融緩和の持続の両方を満たそうとした。それが、12月の金融政策決定会合の意図と考えられる。

 このように考えると、日銀の政策一部修正を金融政策の転換、それに向けた地ならしと論じるのは早計であり、適切ではない。それまでに日銀はより円滑なイールドカーブの形成を市場に促すべく、買い入れ額の修正や国債買い入れオペの運用を目指すだろう。日銀はより繊細に神経を研ぎ澄まして、イールドカーブ・コントロールを進めると予想される。