ところで、ベーシックインカムをはじめとする現金給付政策に対して、「財源がない」という反対があるのはどうしたことか。追加で現金を配っているのだから課税できる対象が必ずある(18)。

 仮に国民へ一律に7万円配るとしよう。所得の下半分の国民に4万円、上半分に10万円課税したらどうなるか。財政収支はプラスマイナスゼロで、上半分の国民から下半分の国民に3万円移転する効果が生じる。

 もちろん、マイナンバーで所得を把握してこの「差額の移転」のみを行うことも理屈上できるが、「一律給付+貧富差を課税で調整=再分配」ならIT化が遅れているわが国でも導入可能だ。

 後述のように同様の課税を給付と同時に「直ちに」行うのが適切だとは限らないが、長期的な状態において「財源はある!」。思うに、ベーシックインカム導入を主張する人は、時々のマクロ経済対策と話を混ぜないで、「ベーシックインカムと財源の話」を独立させて説く方が分かってもらいやすいのではないか。

【「財政」のあれこれ】
に関わる6つの命題

19. 個別の支出に個別の財源を対応させる論法が財政の非効率を生む
20. 財政収支の正負大小は経済環境によって調節されるべきで一定ではない
21. 国が支出を決めなくても減税や現金給付で財政赤字の供給は可能だ
22. 財政赤字供給のあるべき「不足」と「過剰」はインフレ状況で区別できる
23. 雇用にも物価にも金融政策と財政政策の一方だけで対応する必要はない
24. 財政赤字は国債も相続されるので世代を越えた負担にはできない

 2022年は内外の中央銀行の金融政策が注目されたが、その背後で財政が重要なテーマだったと筆者は考えている。そして、日本の財政はあまりに非効率的なのだが、その仕組み自体が論じられることが少ない。

 さて、お金に色は着いていない。その柔軟性こそがお金の長所だ。だが、財政の運営はこの長所を殺そうとするのだからもったいない。例えば、社会保障(増)=消費税(増)、防衛費(増)=所得税(増)のように、個別の支出に対して個別の財源を対応させるやり方は財務マネジメントとして硬直的に過ぎる(19)。