翌日の夕方。C社長は甲社を訪れたD社労士に、Aの件についてのいきさつを説明し、困った表情で尋ねた。
「私だって本当はA君をクビにしたいわけじゃない。しかし90日間の免停は長すぎます。その間営業の仕事はできないし、かといって他に割り当てる業務もない。だから辞めてもらうしかないと言ったところA君には泣きつかれ、B課長もクビには反対しています。うまい解決方法はないでしょうか?」
D社労士はカバンの中からノートパソコンを取り出すと
「まず、免停について調べてみます」
と言い、インターネットで検索した画面をC社長に見せた。
免許の効力が一時的にストップすること。処分期間が終了すると効力が復活する
<免許取り消し処分とは>
免許を取得する以前の状態に戻ること。再度車を運転する場合は免許を取得する必要がある
「免停と免許取り消しの違いくらい知ってるよ」
「では、これはご存じですか?」
・原則取り締まり日から1カ月後までの間に、警察から違反者宛てに通知書が送られてくる。違反者は通知書に記載された日時・場所へ出向き、所定の手続きをした後に、免停処分が決定される。
・従って免停の期間は出頭日からそれぞれの停止期間の満了日までになる。違反行為をしたときから運転が禁止されるわけではない。
<免許停止処分者講習とは>
免停処分を受けた者が、少しでも早く運転を再開したい場合、任意で受けることができる講習で、受講終了後認められれば免停期間を短縮できるが、短縮期間は違反者によって異なる
参考:警視庁「交通違反で取り締まりを受けてしまったら」
「自分は今まで免停処分になったことがないので、このことは知りませんでした。するとA君は今のところまだ車を運転することができますね」
「はい。しかし万一再度交通違反を起こした場合、処分が重くなるので免停期間が満了するまで運転をさせないことも考えられます」
「なるほど。じゃあ、A君には講習を受けてもらうことにして、これから免停期間が終わるまでの間、社用車の運転は禁止します」