『週刊ダイヤモンド』1月28日号の第一特集は『「お金」入門』です。この半世紀にわたって投資運用の世界に身を置いてきたさわかみ投信の創業者・澤上篤人氏は、「金融緩和バブルの崩壊は時間の問題」と断言しました。今必要なのは先を見据えて、起こり得る経済リスクとその構図を理解し、守りをきちんと固めることです。「投資」「年金」「保険」「住宅ローン」……。後悔しないため、少しでも得をするためのお金の必須ノウハウをお届けします。(ダイヤモンド編集部論説委員 小栗正嗣)

「機関投資家はリスクを負えない。
最後の最後にはみんな一緒に落っこちる」

──澤上さんはマネー経済が危機的状況にあるとして、警鐘を鳴らし続けています。

さわかみ投信の創業者・澤上篤人氏が「金融緩和バブルの崩壊は時間の問題」と断言する根拠さわかみ・あつと/さわかみ投信創業者。1971年から外資系運用会社などでの勤務を経て、96年にさわかみ投資顧問設立、99年に長期保有型の「さわかみファンド」を設定。日本における長期投資のパイオニア。 Photo by Kuninobu Akutsu

 債券市場も株式市場も崩落する。金融緩和バブルの崩壊は時間の問題です。

 そもそもこの40年、先進国を中心に金融を緩和し資金を大量に供給すれば、経済は成長するといわれてきました。リーマンショック、コロナ禍を経て、さらに緩和の深掘りが進められ、その結果どうなったか。実際に経済は良くなったのか、豊かになったのか、一度も検証されていない。おかしいでしょう。まさに金融緩和バブルなのです。

──ただし、澤上さんのように金融緩和バブルが崩壊すると断言するのはごく少数派です。

「大丈夫だ」「心配ない」と言う人たちのほとんどは、このバブルに乗っちゃっている。実は、運用のプロである機関投資家もそうなんです。

 彼らは、マーケットトレンドを追い掛けようとする。短期運用が主体になってきているからですが、理由はそれだけではありません。

 そもそも年金など機関投資家というのは、自分の投資判断で上昇相場から降りようとはしません。上昇トレンドが続く中で自ら降りたら、ライバルに投資成績で負けるだけ。自分が首になるリスクもある。そんなリスクは負えないから、最後の最後までトレンドに付いていく。

 音楽が鳴っている間は踊り続けなきゃいけない。だからこそ、バブルじゃない、崩れるわけがないと思いたい。現に居心地はいいし、現状が変わってほしくない。そして最後の最後には、みんな一緒に落っこちてしまう。米国のブラックマンデーのときも日本のバブル崩壊のときもそうでした。

 みんなが一緒であれば、機関投資家の運用は結構、楽なんですよ。なぜなら、どうしようもありませんでした、不可抗力でしたと言いさえすればいいのだから。無責任極まりない。

 世界の運用業界は、1970年代前半まではもっとまともなものでした。その頃から運用に携わっている私から見ると、異常な事態がどんどん進んでいる。歴史の生き証人として、おかしい、おかしいと言い続けてきたわけです。投資運用はマーケットを追い掛けるものではなく、将来価値を先取りしていくもの。それを忘れてはいけません。

 マネー膨張が進めば進むほど、経済合理性がどこかで必ず働きだす。これは当たり前の道理です。