報道によれば、韓国下着メーカー「サンバンウルグループ」のキム・ソンテ前会長が17日、海外逃避8カ月で韓国に送還された。同前会長には北朝鮮への送金疑惑があり、同社の役職員数十人を動員して韓国国内で両替した金を個人の所持品に隠して出国する「分割送金」方式で北朝鮮に渡した金は640万ドル(約8億2000万円)に達するといわれる。

 17日に開かれたイ・ファヨン前京畿道平和副知事の賄賂および政治資金法違反の裁判でも、証人として出席したサンバンウルグループの前秘書室長A氏は「サンバンウルが京畿道の代わりに北朝鮮にスマートファーム事業費50億ウォン(約5億2000万円)を支援した」と述べた。

 京畿道議会では「スマートファームに関連した先端機器などを北朝鮮に送るのは制裁違反になる可能性がある」として事業予算を認めなかったことから、サンバンウルが代納したようである。それが出発点となり、その後も金品の伝達が続き640万ドルになったようである。

 キム前会長は京畿道の事業に関与していた。ただ、「ビジネスのために個人資金を(北朝鮮高官に)渡した」と認めながら、「李在明代表を全く知らない」と述べた。

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 しかし、キム前会長は李在明民主党代表の弁護士費代納疑惑で捜査線上に浮かんでおり、李前知事がサンバンウルの法人カードを受け取っていたとも伝えられている。

 またサンバンウルは日本の“戦争犯罪”に関わる被害者と専門家を集めた国際会議「アジア太平洋の平和・繁栄のための国際会議」の開催にあたって多額の資金提供をしていた。反日活動は李在明氏の好む分野である。

 韓国は文在寅政権時代、日米韓協力に事実上背を向け、北朝鮮との関係改善を主要外交政策としてきた。日本との関係は元徴用工問題などがあり、史上最悪と言われるまでになった。米国との信頼関係も崩れていた。

 尹錫悦政権になって外交の見直しを進めているが、そのためには国内のバックアップが必要である。そのような時に北朝鮮のスパイによって国内世論の反対ムードを形成するようでは、信頼される国にはなれないだろう。

 スパイ組織や北朝鮮の影響下にあると思われる市民団体の取り締まりは、至急の課題である。

(元駐韓国特命全権大使 武藤正敏)