国内お世話人形界の歴史
“黒船来航”的なソランちゃんの登場

「メルちゃん」が誕生したのが1992年で、「ぽぽちゃん」の誕生が1996年、ともに今から四半世紀以上前から続くロングセラー商品であり、細かい違いはいくつかあれど同じ“お世話人形”の2トップとして、国内お世話人形界をもり立ててきた。いくつものお世話グッズや洋服などがリリースされ、世界を広げていったのである。
 
 しかし、運がほほ笑んだのは「メルちゃん」の方だった。たしかに「メルちゃん」の方が、メルちゃんの歌があったり、 “メルちゃんアイランド”が期間限定でオープンするなど、プロモーションの華々しさがあった。ただ、元はともに価格が3000~4000円くらいのお世話人形である。質や出来にそこまで大きな差があったわけではない。だが、いつの頃からか「ぽぽちゃん」は「怖い」と言われ始めた。
 
「ぽぽちゃん」は、特に目が特徴的である。目にまつげがなく、顔がツルっとした印象でやや日本人形的、加えて白目がなく、白目に該当する部分が茶色で瞳孔が黒だった。これは、ちょっと遠くからだと眼球全体が真っ黒に見える。
 
“眼球が真っ黒な子ども”の像が見る人にショックを与えた映画『呪怨』は2003年に公開されたが、そのあたりから“眼球真っ黒”がホラー映画の定番として国内外問わず用いられ始めたように記憶している。つまり不運にも、「ぽぽちゃん」が発売されて数年後、ぽぽちゃんの持つ“黒っぽい眼球”が、ホラー映画の巻き添えを食う形で、世の中的に怖いものだとされ始めたのであった。
 
 一方のメルちゃんは、ちょっとたれ目でまつげも書いてあって、ぽぽちゃんよりアニメ的で、時流に沿っていた。メルちゃんは定期的にリニューアルをしてきていたので、その試みが結実していたと見ることもできるかもしれない。
 
 そして2014年、ついにメルちゃんの妹である「おめめぱちくりネネちゃん」が登場する。

 実は、メルちゃんの目はイラストでいつ何時でも動かなかったが、対する「ぽぽちゃん」の目は可動式であり、横になると本当に寝ているように閉じた。そこへメルちゃんファミリーが、ネネちゃんたる新戦力をもって、己の弱点を克服する形でぽぽちゃんを凌駕(りょうが)しにかかったのである。たしかにネネちゃんは、メルちゃんのかわいさを一歩先に進めたような華があった。
 
 このままメルちゃんファミリーがリードしたまま大勢が決した……かに思えた。が、その後2017年、国内お世話人形界に激震が走った。「レミンちゃん&ソランちゃん姉妹」である。