中国経済の持続的な景気回復は時間を要する

 一つの見方として、中国の政策運営スタンスが「締め付け」から「緩和」に向かうと先行きを楽観する主要投資家は増えている。ゼロコロナ政策や3つのレッドラインなど、人々の行動を強く規制してきた政策が緩められることによって、短期的に中国の個人消費、生産、物流が徐々に増える可能性もある。

 ただ、そうした動きが持続するとは考えづらい。現時点で、中国経済が本格的に持ち直し、雇用など実体経済の安定感は増すだろうと論じるのは早計だ。そう考える要因は複数ある。

 まず、人の移動の増加によって、再度、コロナ感染拡大が勢いづく恐れがある。1月18日、習国家主席は農村部の感染再拡大に懸念を示した。それは地方の共産党幹部に医療体制の拡充などを暗に指示した発言とも解釈できる。それだけ、中国製ワクチンの効果は不十分であり、治療薬なども不足しているのだろう。人々の防衛本能が後退するにはまだ時間がかかりそうだ。

 それに加えて、マンション建設や医薬品工場での賃金未払いに対するデモなどの発生も報じられている。雇用と賃金の支払いに対する人々の不安心理はむしろ強まっているようだ。過去に比べて中国の個人消費の持ち直しペースは緩慢になる可能性は高い。それに伴い雇用・所得環境の不安定感も増しやすい。

 度重なる規制緩和にもかかわらず、不動産市況の悪化に歯止めがかかる兆しも見られない。22年の不動産投資は前年比10.0%減少した。1999年以来で初の減少だ。

 過去、地方政府はデベロッパーに土地の利用権を売却し、インフラ投資などの財源を確保した。デベロッパーは借り入れた資金を用いてマンションなどの建設を増やし、業績は拡大した。粗鋼など基礎資材の生産能力も増強された。

 そうした不動産投資を起点に、インフラ投資、雇用、所得を増やして高成長を実現した経済運営は限界を迎えたと考えられる。また、IT先端部門に対する共産党政権の締め付けも本当に弱まるとは考えづらい。中国経済の先行きは依然として不透明と考えられる。