上下関係の厳しい職場だからこそ必要な「ユーモア」

 CAの職場は上下関係の厳しいところでもありました。機内で食事をするときは、まず上司や先輩が何を召し上がるかを確認して、新人はその他のものを選ぶのが慣習になっていました。このようなこともあり、食事を取るタイミングについても「上司や先輩より先に食べてもいいのだろうか」と迷うことがありました。

 国際線のような長距離のフライトは食事時間が割り当てられているので問題ありませんが、国内線や近距離の国際線の場合は隙間時間にさっと食事をしなければいけません。慣れていない新人の時は食事を取るのを躊躇(ちゅうちょ)してしまいがちで、食事せずに仕事を優先してしまう人もいました。

 そんな時、「これは業務命令ですから!」と厳しい口調で食事を促す先輩がいました。フライトはいつイレギュラーな事態が発生するかわかりません。もし、大幅な遅延になった場合でも、体力を温存し、質の高い業務をしなければいけないのです。「先に食事をしてくださいね」というような言い方では社交辞令のように捉えられてしまいがちなので、皆が行動しやすいようにあえて仰々しい言い方をしてユーモアで促した、というわけです。

 上座を譲り合ってしまい、なかなか全員が食事の席につけないというようなシーンに遭遇したことはないでしょうか。目上の人に対する気遣いや礼儀は度が過ぎると事が進みません。そんな時に上司や先輩が「いや、これ業務命令だから」という言い方をすれば、部下や後輩もその行動を取りやすくなります。

 例えば立場が上の人から答えたくない質問をされた時も、「申し訳ございません。国家機密でして…」とやんわり回答を拒否すれば、角も立たないでしょう。上下関係が厳しい職場だからこそ、ユーモアが生きるのです。