中国に対する半導体輸出を厳格化する米国

 トランプ前政権の発足以降、米国は半導体の対中輸出規制を強化してきた。その背景には、戦略物資として半導体の重要性が急速に高まっていることがある。安全保障、経済、宇宙、脱炭素など、半導体を抜きに新しい考えを実現することは困難な時代だ。脱炭素に伴うパワー半導体の需要増加など、これまで半導体との関係性が薄かった分野でも、より多くのチップが必要とされている。

 そうした状況下、中国では習近平政権が半導体産業の強化策を推進した。中国のファウンドリである中芯国際集成電路製造(SMIC)は、先端分野に分類される回路線幅7ナノメートル(ナノは10億分の1)のチップ生産を開始したようだ。チップの設計、製造技術やライン構築のノウハウを、中国は日米欧および台湾の企業から吸収してきた。

 2016年頃、米国ではインテルが14から10ナノメートルへの微細化につまずいた。アップルはチップの設計・開発体制を強化し、製造を台湾積体電路製造(TSMC)により多く委託した。インテルも先端、および最先端チップの製造技術をTSMCに依存するようになった。

 1990年代半ばに日米半導体摩擦が終わって以降、半導体産業の盟主の地位を確立したインテルなど、米半導体企業の製造能力の向上は鈍化した。対照的に世界経済への半導体供給地として台湾の存在感が高まった。その後、習政権は台湾に対する圧力を強めている。米国にとって台湾にチップ供給を依存するリスクは一段と高まっている。

 経済安全保障体制の強化のため、バイデン政権は中国向けの半導体輸出規制を一段と強化している。2022年10月に米商務省産業安全保障局は、16または14ナノメートル以下のロジック半導体などの製造装置の対中輸出を事実上禁止した。

 そしてこの度、米国は日蘭にも製造装置の対中輸出管理で足並みをそろえるよう求めた。バイデン政権はTSMCなどに補助金を支給し、米国内での生産能力増強も要求している。