本邦企業に必要な新しい製造技術創出

 今後、わが国の半導体製造装置メーカーに求められるのは、他国の企業に先駆けて、新しい製造技術を創出することだ。その成否は、わが国経済の展開に大きな影響を及ぼすだろう。

 中長期的に考えると、中国は産業補助金政策をさらに強化し、半導体製造装置の国産化を急ぐだろう。製造装置は分解すれば、その仕組みを模倣できる。

 共産党政権が海外企業に国有・国営企業との合弁設立を呼びかけ、これまで以上に生産技術の移転を急ぐ可能性もあるだろう。とりわけ近年、共産党政権は「専精特新」の考えを重視している。この考えは、先端分野で独創的な製造技術の実現に取り組む中小企業の支援を強化する産業政策である。

 中長期的に、中国の半導体製造装置などの創出力が高まる可能性は軽視できない。そうした展開を防ぐために、米国政府は対中禁輸措置などを強化し、先端分野での米中対立は先鋭化するだろう。

 将来的に、世界の半導体産業における製造装置などハードウエア創出力の重要性はさらに増すはずだ。1990年代以降の米国経済では、ハードよりもソフトウエアの開発を強化し、IT先端分野を中心に経済運営の効率性を向上してきた。それを受けて、台湾TSMCはファウンドリ専業のビジネスモデルを確立し、最新チップの製造需要を取り込んだ。

 こうした流れをつくるのに必要不可欠な、超高純度の半導体部材、製造装置の供給において、わが国企業は大きな役割を果たしてきた。

 ただ、次世代の回路線幅2ナノメートルのロジック半導体の製造に関しては、これまでとは異なる製造技術が求められるとの見方は多い。

 また、半導体産業育成によって産業構造の転換を目指すインドは、より多くの部材や製造装置を求めるはずだ。新しい製造技術実現のためにも、本邦の半導体製造装置、関連部材メーカーはこれまで以上に研究開発を強化すべき局面を迎えている。