FRB(米連邦準備制度理事会)は1月31日と2月1日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で0.25%の利上げを決定し、前回に続き利上げ幅を縮小した。インフレの今後の動向を左右するのは雇用との見方が多いが、インフレ収束の予兆が表れる統計は別にある。(SMBC日興証券 チーフ為替・外債ストラテジスト 野地 慎)
財や家賃のインフレは
峠が見えてきた
1月31日と2月1日のFOMC(米連邦公開市場委員会)では0.25%ポイントの利上げが決定された。
FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は、会合後の会見で「景気抑制的な状態をしばらく続ける必要があるだろう」「FOMCは停止前にあと2回ほどの利上げを協議中」「予測通りの経済動向なら、23年中の利下げは想定せず」と語ったが、米国債利回りは会見中に低下し、短期金融市場では年内の利下げを織り込む動きも進んでいる。
年内利下げを否定するパウエル議長と、年内利下げ織り込みを進める金融市場という構図だが、結局、インフレが収まってくるかどうかが最重要であろう。
そのインフレに関するパウエル議長の会見での発言を拾ってみると、まず「財のディスインフレ過程は始まっている」との声が聞かれた。
供給制約解消や低調なクリスマス商戦などを受け、店頭に並ぶ財の価格の伸びが前年比2%程度まで鈍化したことは12月の消費者信頼感指数統計で既に確認されており、パウエル発言はそれを指摘したにすぎないといえる。
他方、サービス物価については「住宅を除くコアサービスでディスインフレを確認する必要がある」との発言が聞かれた。家賃の「住宅価格の伸び」に対する遅行性に鑑み、既に下落を始めている住宅価格が今秋にも家賃の伸びへのプラス寄与度を弱めるとの見解が持たれていることを示唆した格好だ。
1月末に米国の住宅価格の下落傾向が続く統計が公表されたことも併せ考えれば、こちらの「インフレ圧力」もいずれ収まるとの自信が見え隠れする。
そうなってくると、労働需給の逼迫(ひっぱく)とそれに伴う賃金上昇が促す「除く家賃」のサービス物価こそが最重要ということになりそうだ。
2月1日に公表された米国の12月求人件数の上昇を引き合いに出しながら「求人件数の数字は恐らく重要な指標だろう」とも話している。つまり、今後の最重要ポイントは雇用、賃金の伸びということになり、最も注目すべき経済統計は雇用統計ということになりそうなのだが、ただ、雇用統計は遅行統計だ。
では、注目すべき、インフレ収束の予兆が表れる統計は何なのか。次ページ以降検証していく。