「あれ? いま何しようとしてたんだっけ?」「ほら、あの人、名前なんていうんだっけ?」「昨日の晩ごはん、何食べんたんだっけ?」……若い頃は気にならなかったのに、いつの頃からか、もの忘れが激しくなってきた。「ちょっと忘れた」というレベルではなく、40代以降ともなれば「しょっちゅう忘れてしまう」「名前が出てこない」のが、もう当たり前。それもこれも「年をとったせいだ」と思うかもしれない。けれど、ちょっと待った! それは、まったくの勘違いかもしれない……。
そこで参考にしたいのが、認知症患者と向き合ってきた医師・松原英多氏の著書『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』(ダイヤモンド社)だ。
本書は、若い人はもちろん高齢者でも、「これならできそう」「続けられそう」と思えて、何歳からでも脳が若返る秘訣を明かした1冊。本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、脳の衰えを感じている人が陥りがちな勘違いと長生きしても脳が老けない方法を解き明かす。

【91歳の医師が明かす】認知症リスクが飛躍的に高まる“聞けば納得の原因”イラスト:chichols

認知症と歯の本数

【前回】からの続き 歯の本数も、認知症と深く関わります。歯を失うと噛むことができなくなり、そしゃくに必要なあごの筋力も落ちてしまいます。

成人の歯は、全部で28~32本。80歳になっても20本以上の自分の歯を残そうという「8020(ハチマルニイマル)運動」が、1989年から厚生省(現・厚生労働省)と日本歯科医師会によって推進されています。

歯を20本以上残せば
認知症リスクは下がる

自分の歯が20本以上あれば、食生活はほぼ満足に送れるといわれています。おそらく、そしゃくにも大きな支障はないでしょう。日本では、60代までは自分の歯が20本以上ある人は多いのですが、70歳以降になるとそれが20本未満になるのが現状です。

70歳以降こそは、認知症のリスクが高まる世代ですから、20本以上の自前の歯を残すことを目標にしましょう。歯の本数と認知症との関わりを調べた研究があります(神奈川歯科大学大学院歯学部の山本龍生教授らによる)。

歯がないと認知症リスクが1.85倍

この研究では、要介護認定を受けておらず、自立した日常生活を送っている65歳以上の4425人の健常者を対象に、歯と義歯の状況を質問紙で調査したうえで、その後4年間の認知症の発症状況を追跡調査しています(Yamamoto et al.,Psychosomatic Med. 2012)。

その結果、年齢・疾患の有無・飲酒といった生活習慣などにかかわらず、歯がほとんどなく、義歯も使用していない人は、20本以上の自前の歯を持つ人と比べて、認知症の発症リスクが1.85倍になることが判明しました。

【91歳の医師が明かす】認知症リスクが飛躍的に高まる“聞けば納得の原因”

義歯を使えば
認知症リスクが約4割低下

「歯を失う⇒そしゃくの減少⇒脳の血流量減少⇒認知症」という明確な因果関係があるかどうかはわからないのですが、状況証拠としては十分でしょう。即有罪とはいえないまでも、限りなく黒に近いグレーといった感じでしょうか。

その間接の証拠として、自前の歯がほとんどなくても、義歯を使っている人の認知症リスクは、義歯を使っていない人より約4割下げられました。義歯があれば、自前の歯と同じようにそしゃくできるからでしょう。 【次回に続く】

※本稿は、『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』より一部を抜粋・編集したものです。(文・監修/松原英多)