「あれ? いま何しようとしてたんだっけ?」「ほら、あの人、名前なんていうんだっけ?」「昨日の晩ごはん、何食べんたんだっけ?」……若い頃は気にならなかったのに、いつの頃からか、もの忘れが激しくなってきた。「ちょっと忘れた」というレベルではなく、40代以降ともなれば「しょっちゅう忘れてしまう」「名前が出てこない」のが、もう当たり前。それもこれも「年をとったせいだ」と思うかもしれない。けれど、ちょっと待った! それは、まったくの勘違いかもしれない……。
そこで参考にしたいのが、認知症患者と向き合ってきた医師・松原英多氏の著書『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』(ダイヤモンド社)だ。
本書は、若い人はもちろん高齢者でも、「これならできそう」「続けられそう」と思えて、何歳からでも脳が若返る秘訣を明かした1冊。本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、脳の衰えを感じている人が陥りがちな勘違いと長生きしても脳が老けない方法を解き明かす。

【91歳の医師が明かす】<br />認知症リスクを高める「睡眠障害」を解消する<br />“王道にして納得の2つのルール”イラスト:chichols

⑤カフェイン飲料と
 お酒を控える

【前回】からの続き コーヒーに含まれるカフェインは、脳に作用して覚醒を促します。飲んでから数時間効くこともありますから、夕方以降は控えたほうが無難です。コーヒーの味わいがほしくなったら、カフェインをとり除いた豆を使った「デカフェ」にしましょう。

カフェインはコーヒーだけでなく、紅茶・緑茶・ウーロン茶・コーラ類・栄養ドリンクなどにも含まれています。パッケージの表示などを見て、カフェインの有無を確かめてみてください。

カフェインには利尿作用もあります。就寝前にとりすぎると夜中にトイレに起き、中途覚醒の引き金となる恐れがあります。アルコールにも、カフェインと同じように利尿作用があるため、夜中にトイレに起きて中途覚醒を起こすこともあります。

また、お酒には覚醒作用があります。飲みすぎて酩酊(めいてい)すると寝入りやすくなりますが、眠りは浅くなり、アミロイドβ(異常たんぱく質)の排泄に有益な、深いノンレム睡眠がとりにくくなります。深酒、寝酒は控えましょう。

⑥眠る約90分前に
 浴槽入浴をする

前述のように、浴槽入浴をすると体温が上がります。体温には、体表の体温である「皮膚体温」と、脳や内臓の体温である「深部体温」があり、深部体温は皮膚体温より2度ほど高いのが普通です。浴槽入浴をすると、皮膚体温も深部体温も上がります。

ヒトは、皮膚体温が上がって深部体温が下がり、両者の差が小さくなるほど眠気が高まります。入眠時刻の90分ほど前に浴槽入浴で皮膚体温を上げておくと、皮膚体温と深部体温の差が小さくなり、なおかつ一度上がった深部体温が反動で下がるタイミングで寝入りやすくなります。

“危険な薬”ではない
睡眠薬を有効活用する

以上のような自分でできる対策をしても、睡眠障害が解決しないのなら、「睡眠外来」を訪れて診察を受けたうえで、必要ならば睡眠薬(睡眠導入剤)を処方してもらうようにしてください。

昔は“睡眠薬=危険な薬”というイメージがありました。睡眠薬を大量に飲んで自殺するシーンを描いた映画やドラマがあった影響かもしれません。昔の睡眠薬には、使い続けると認知症につながるものもありました。

ところが現在の睡眠薬は、昔の睡眠薬とは、まったく別モノです。交感神経の働きを抑えて興奮した神経を落ち着かせたり、睡眠の質を整えたりする効果のある脳内の神経伝達物質「GABA(ギャバ)」(γ ガンマ―アミノ酪酸)の働きを強めるタイプが主流になっており、用法・用量を守れば危険はありません。

※本稿は、『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』より一部を抜粋・編集したものです。(文・監修/松原英多)