「あれ? いま何しようとしてたんだっけ?」「ほら、あの人、名前なんていうんだっけ?」「昨日の晩ごはん、何食べんたんだっけ?」……若い頃は気にならなかったのに、いつの頃からか、もの忘れが激しくなってきた。「ちょっと忘れた」というレベルではなく、40代以降ともなれば「しょっちゅう忘れてしまう」「名前が出てこない」のが、もう当たり前。それもこれも「年をとったせいだ」と思うかもしれない。けれど、ちょっと待った! それは、まったくの勘違いかもしれない……。
そこで参考にしたいのが、認知症患者と向き合ってきた医師・松原英多氏の著書『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』(ダイヤモンド社)だ。
本書は、若い人はもちろん高齢者でも、「これならできそう」「続けられそう」と思えて、何歳からでも脳が若返る秘訣を明かした1冊。本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、脳の衰えを感じている人が陥りがちな勘違いと長生きしても脳が老けない方法を解き明かす。

【91歳の医師が明かす】<br />誰もがリスクあり! 認知症になる今そこにあるキッカケイラスト:chichols

転倒・骨折は認知症のキッカケ

【前回】からの続き 前述の山本先生らの研究グループの業績から、興味深い研究をもう1つ紹介しましょう。この研究では、歯と義歯の状況と「転倒リスク」の関係を調べています。高齢者が転倒で骨折をして長期の入院を強いられると、「寝たきり⇒要介護⇒認知症」と進行することがあります。

山本先生らは、65歳以上の健常者で過去1年間に転倒した経験がない人1763人を対象として、歯と義歯の使用状況を質問紙で調査のうえ、その3年後に過去1年間に2回以上転倒したかどうかを調べました。

【91歳の医師が明かす】<br />誰もがリスクあり! 認知症になる今そこにあるキッカケ

その結果、年齢・性別・要介護認定の有無などにかかわらず、自前の歯が19本以下で義歯を使用していない人は、20本以上の自前の歯を持つ人と比べて、転倒リスクが2.5倍になっていることがわかりました(Yamamoto et al.,BMJ Open,2012)。

歯を失うと頭部が不安定になる?

それにしても、なぜ歯を失うと転倒しやすくなるのでしょうか? これらの研究を行った山本先生は、次のように説明しています。そしゃくに関わる筋肉や、「歯根膜」(歯とその土台となる骨の間にある薄い膜)からは、脳に向かって神経がのびており、それが頭部の安定性を保っています。

歯を失うとこのしくみが円滑に働かなくなり、頭部は不安定になります。人体の頭部は重たいので、そこが不安定になると全身のバランスを崩しやすくなり、転倒の一因になりえるというのです。

義歯を使うことの大切さ

私自身は、幸いなことに、これまで歯を2~3本失っただけで、あとは自前の歯で、不自由なく噛めています。山本先生らの研究によると、自前の歯が19本以下でも、義歯を使っている人の転倒リスクは、20本以上の自前の歯を持つ人と大きく変わらなかったそうです。

歯を失っても、義歯を入れれば、噛む力は低下せず、転倒リスクは減らせるのです。かかりつけ医を持つことは大事です。認知症予防の立場からすると、“かかりつけ歯科医”も持って、健康な歯と口腔環境を保つことは、負けず劣らず重要でしょう。 【次回に続く】

※本稿は、『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』より一部を抜粋・編集したものです。(文・監修/松原英多)