SBG業績を悪化させた世界経済の環境変化

 世界的に金利が上昇し、米中対立や異常気象、コロナ禍の発生、ウクライナ紛争などを背景に、世界のサプライチェーンは不安定化し、インフレが進行している。インフレ鎮静化を目指して、米欧の中央銀行は利上げや量的引き締めを進めている。それに伴い、世界的に金利(国債の流通利回り)は上昇して景気は減速し、株価は下押しされている。

 SBGが投資してきた企業の中には、期待先行で株価が上昇した銘柄が多い。10~12月期の最終赤字の一因に、韓国のクーパンや米シェアオフィスのウィーワークなどの株価下落がある。SPAC(特別買収目的会社)買収によるスタートアップ企業のIPOが難しくなったことも響いた。

 IT先端企業が急成長を遂げた中国経済の先行きも見通しづらい。共産党政権はテンセントやアリババのオンラインゲームを認可しているが、その一方で、テンセントはコスト削減のために仮想現実(VR)機器への参入を断念したと報じられた。

 全体として、共産党政権によるIT先端企業への締め付けが本格的に緩和され、成長期待が高まる展開は想定しづらい。むしろ、支配体制強化を優先する習政権は、引き続きIT先端企業への監視を強化するだろう。これにより、中国企業のアニマルスピリット(野心的な意欲)が減殺されるリスクが高いといえる。

 加えて、不動産市況の悪化などによる中国経済の成長率低下は、東アジア新興国の経済成長を下押しし、当該地域のIT先端企業の成長も鈍化するだろう。

 また、米GAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)の業績悪化に見られるように、IT先端分野では競争が激化し、各企業の成長性は鈍化している。SNSを用いた広告や、サブスクリプションの分野では新規参入が増え、コロナ禍によるニーズの急増もあって、多くの企業が成長を過信して採用や投資を増やした。ところが今、それらのIT先端企業は収益性が低下しコスト削減に追われている。こうした環境変化もSBGの業績悪化要因だ。