英アームの上場が、SBG立て直しの鍵を握る
当面、SBGの事業運営の不安定感は高まりやすい。複数の要因がある中で最も重要なのは、世界的な金利上昇による成長率低下の懸念だ。
米国では想定された以上に労働市場が過熱し、個人消費も底堅い。他方、わが国では国債市場の流動性低下や物価上昇に対応するために、日銀が金融政策の追加修正を行う可能性もある。ユーロ圏でも金融引き締めが続きそうだ。世界的に金利上昇圧力がかかると、経済成長率の下振れ懸念は高まりやすい。それは、投資ビジネスを行うSBGにとって悪影響だ。
また、世界のIT先端分野では、環境変化のスピードが加速している。半導体分野では地政学リスクへの対応や自国の産業基盤強化などを念頭に、台湾から米国、わが国、欧州へ急速に生産拠点の分散が進んでいる。それは、各国におけるIT先端分野での製造技術の重要性を高めるだろう。
短期的に、米国などで利上げが続くことを考慮すると、各国企業はコスト削減を強化しつつ、ソフトとハードの両面で競争力を向上させなければならない。加えてIT先端分野では、成長が鈍化し始めたサブスク型のビジネスモデルから、「チャットGPT」などに代表される「言語型AI関連ビジネス」に、急速に経営資源が再配分され始めた。世界的な半導体産業の地殻変動も一段と激化するだろう。
そうした展開に対応するために、急ぎSBGは、半導体設計に強みを持つ英アームの上場を実現し、業績を立て直そうとしている。アームの上場は、SBGの成長において重要な要素の一つだ。それに加えて、金利上昇などによる既存ポートフォリオの下方リスクを精査し、成長が鈍化する可能性の高い投資先の資金回収を強化するだろう。
その上で、言語型AIの利用がもたらす世界経済の成長を取り込むべく、SBGは先端企業への投資を積み増すはずだ。世界経済の先行き不透明感が高まる中、SBGがどのように一連の取り組みを実行し、業績を立て直すかに注目したい。