1月中旬、「3月末で退職したい」と勤務先の上司に退職届を提出

 1月中旬、AはCチーフに「突然ですが3月末で退職したいんです、本来はD社長に提出すべきですが、Cチーフには今までお世話になったので……」と言い、退職届を差し出した。Cチーフは「おいおい、今日はエイプリルフールじゃないぞ」と笑いながら退職届を戻そうとした。

 Aは退職理由を正直に話し、改めて退職届をCチーフに渡した。Aが本気であることがわかったCチーフは「君は会社に必要な人間だ。退職届はしばらく私が預かっておくから、考え直してくれないか」と言った。

 その後1週間、AはCチーフから「退職しないでほしい」と説得を受け続けたが、断固拒否し、仕事へのやる気がうせたとばかりに投げやりな態度を取った。その様子を見たCチーフは、Aの説得をあきらめ、預かっていた退職届をD社長に提出した。

 CチーフからAの退職理由、現在の様子などを聞いたD社長は「A君には今まで随分がんばってもらったけど、仕事に対するやる気がないならしょうがない。早々に代わりを探さないと」と言い、退職届を受け取った。そしてAを呼び、3月31日付での退職を承諾したことを告げた。

3月上旬、転職の話が立ち消えに……

 しかし3月上旬、Bからの電話で事態が急変した。

「A君、ごめん。一緒に仕事しようって話、なかったことにしてくれないか?」
「どういうこと? まさか会社を継がないことになったとか……」
「いや、会社は継ぐんだけど、得意先の都合で受注する仕事が大幅に減ってしまった。A君に払うお金の工面ができないから、当分は自分1人で頑張るよ」

 Aは、怒声を上げた。

「何言ってんの! こっちはとっくに会社に退職届を出したのにどうしてくれるんだ、責任取れよ」
「だから謝ってるでしょ? それにA君はまだ退職してないんだから、社長に話して退職をやめればいいじゃないか。責任取れだなんて大げさだよ」