アサヒビール新社長はP&G出身、“外様抜てき”でHD次期社長の「本命」は?Photo:Diamond

アサヒグループホールディングス(HD)傘下で国内ビール大手のアサヒビールの社長が4年ぶりに交代した。新社長に就任するのは、日用品大手P&Gジャパンなどを経て2018年に入社した松山一雄氏だ。“外様社長”の誕生はアサヒグループHDの次期社長レースにどんな影響をもたらすのか。本命候補の実名を大胆予測する。(ダイヤモンド編集部 山本興陽)

アサヒビール4年ぶり社長交代、松山専務が昇格
営業畑からマーケ畑への「路線転換」

「路線の転換だ」――。アサヒビールの社長交代について、競合メーカーの元幹部はこう指摘する。

 アサヒグループホールディングス(HD)傘下で、国内ビール大手のアサヒビールの社長が3月16日、4年ぶりに交代した。

 新社長には松山一雄専務が昇格し、塩澤賢一社長は会長に就任する。松山氏は日用品大手P&Gジャパンなどを経て、18年9月にアサヒビールに入社し、19年からマーケティング本部長を務めている。松山氏への内々示は、22年12月下旬頃に日本統括会社であるアサヒグループジャパンの濱田賢司社長が伝え、「『そうきたか』と驚いたが、違和感はなかった」(松山氏)と振り返る。

 塩澤社長と平野伸一前社長は共に“営業畑”だった。マーケティング畑の松山氏への交代となるトップ人事の背景には、アサヒビールの方針転換があると業界内ではみられている。

 塩澤氏は自身の後継者に求める要素として、「消費者を見ている人材」と、1月中旬のダイヤモンド編集部の取材で語っていた。

 アサヒは22年のビール類シェアで3年ぶりにキリンビールから首位を奪還した。その一因は、22年に主力ビール「スーパードライ」のフルリニューアルを1987年の発売以降で初めて断行し、成功を収めたことだ。

 消費者を見つめ、マーケティング本部長としてアサヒビールの変革を支えた松山氏こそ、塩澤氏の“意中の人”だったのだ。アサヒグループHDの勝木敦志社長も、「今後のアサヒビールの成長のために、適切な人材」と松山氏について太鼓判を押す。

 社長の輩出部門の変化と合わせて、アサヒグループ社内外でひそかな話題となっているのが、トップの「交代時期」だ。平野伸一前社長は就任から3年で交代したが、業績不振を受けた事実上の更迭だった。前々任の小路明善現HD会長はアサヒビールの社長を約5年務め、近年のHD社長も5~6年程度で交代することが多い。

 だからこそ、4年での交代には、「塩澤氏の健康問題によるもの」(アサヒ関係者)との声が上がる。例年よりも早い社長交代の背景には何があったのか。

 次ページでは、アサヒビールの松山新社長誕生の背景と、変化した次期HD社長レース模様を、本命候補の実名を交えて大胆予測する。