全体の9割以上が
「債券」で含み損

 次に、国債・地方債・社債等を区分する「債券」に着目した。図表2と同様の手順で債券についても含み益と含み損を差し引きし、上位および下位10行を機械的に抽出した[図表3]。

 株式とは逆に、含み益が認められたのはわずか7行にとどまり、全体の9割以上の91行に含み損が認められた。含み益が認められた7行の合計額約260億円のうち、1位の岩手銀行の約184億円だけで、7割を占める。

 数値は昨年9月末現在の市場環境での時価だが、その後の昨年12月20日には、日本銀行が大規模な金融緩和政策の修正方針を決定し、±0.25%から±0.50%への事実上の利上げを行っている。

 それまでマイナス金利で発行されていた2年国債も12月23日にはプラスに転じ、1月18日までプラスで発行され続けている。3月末まで現在の金利水準で推移した場合には、邦銀が低金利時代に積み上げた債券ポートフォリオの含み損が、さらに膨らむ可能性があろう。

「外債・投信」の
含み益は11行

 内訳の最後は、外債・投信などを含む「その他」の区分だ。株式・債券と同様の通算・並べ替えを行ったが、10位の長崎銀行に続く11位の福邦銀行までがプラス、ゼロの但馬銀行と北九州銀行の2行を除く86行がマイナスとなった。90位から99位までの10行の単純合計だけで、含み損が6552億円に達する[図表4]。

 報道によれば、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、SVBグループの株式と債券を約437億円保有している模様だ。わが国以外でも、ノルウェーの政府系ファンドがSVBグループに投資を行っていた事実とその後の動向が断続的に報じられている。

 邦銀が直接SVBに投資を行っていなくとも、SVBの破綻によって損失を被ったこのような機関投資家などに投資していれば、外債などの価格が下落する可能性がある。

 ライバル行であったUBSによる買収によって信用不安の収束を図っているクレディ・スイスグループも、3月19日にスイス金融当局がAdditional Tier1債券(偶発転換社債/AT1債)を無価値にして自己資本に組み入れると発表した。