米国株上昇は逆業績相場前の「持ち直し」にすぎず、慢心した相場上昇に気を緩めるなPhoto:PIXTA

米金融不安がいったん遠のいたかという安堵、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げは打ち止め間近かという安堵は、株式相場に慢心の上昇を招くかもしれない。しかし、長短金利サイクルを組み合わせてみれば、その水準、逆イールド、信用タイト化から、今が景気悪化前夜であることは明らかだ。株式の逆業績相場入りのリスクへ警戒を怠れない。(楽天証券グローバルマクロ・アドバイザー TTR代表 田中泰輔)

慢心サマーラリー再び?
今は逆業績相場前の持ち直しにすぎず

 3月に直面した米欧の銀行不安は、いったん小康状態となった。おそらく次に現れる金融不安は様相を変えていると思われ、生じるまでにいくらかの時間的猶予があり得ると見る。その間の市場には、もう金融面のリスクは大丈夫と、慢心が生じている可能性がある。

 4月後半の決算期を無難に乗り切り、5月初めのFOMC(米連邦公開市場委員会)で0.25%の利上げを確認すれば、アク抜け感から、底堅さを保った株式相場の上値志向のリズムがじわり強まるかもしれない。

 金融不安の再燃があるかどうか次第とは言え、うまくすると、時間的猶予の下で、相場の上方動意の持続が慢心を強化し、サマーラリーまで連なることもあり得ない話ではない…そうイメージすると、老婆心がもたげてくる。

 株式相場は、たとえ慢心でも一度走り出すと、上がる相場を追認して正当化するように材料解釈を傾けてしまうのが常である。そうなると、投資家にこの局面の底流でくすぶるリスクを訴えたところで、聞く耳をなかなか持ってはくれない。

 昨年のサマーラリーなどはその典型であった。当時、インフレ上昇率は許容できない高さにあり、FRB(米連邦準備制度理事会)は利上げを加速し始めたばかりだった。

 インフレ鈍化、利上げ幅縮小を期待したサマーラリーは、トレンドにはなり得ず、持続性を見込むことはできないと説いたが、買っている向きからは当然のこととして反感すら向けられたものだ。

 昨年のサマーラリーは、程なくしてFRB当局者から楽観が過ぎると牽制され、手ひどい反落に見舞われた。来る場面も同様に、相場が一人舞い上がって、反落リスクを被る展開を繰り返すと、予言のようなことを語るつもりはない。

 ただ、株式相場は、利上げを恐れる逆金融相場期から、景気悪化、業績悪化に伴う逆業績相場期へ向かう狭間の持ち直し局面と認識している(下図参照)。基調としては下方リスクが引き続き優勢という判断に立ち、慢心ラリーの可能性に対して、転ばぬ先の杖を提供しておこうと考える次第。

 次ページ以降、金利サイクルから現在の相場を検証し、逆業績相場の下降サイクル入りが迫っていることを示す。