「お友達内閣」の倒閣運動は失敗に
青木氏の後任に大和証券・鈴木氏が浮上
「お友達内閣」。青木体制に向けられるのはそんな批判だ。特に、矛先は青木氏の最側近である元アメリカンホーム保険会長の上田昌孝専務理事と村田一治理事の2人に向かう。村田氏は青木氏のキャディ出身である。
特に上田氏については、「選手へのリスペクトがないのが問題」(ゴルフ界の重鎮)とされ、一部選手からは煙たがられてきた。20年には、ベテランから若手までのプロ約40人が署名し、上田氏らの役員解任を求める嘆願書騒ぎが起きている。
そして、足元で反青木の急先鋒の立場を取っていたのが、2月末で副会長を退任した三木氏と、谷原秀人選手会長である。そもそも、選手会の要望として22年に自身の“タニマチ”である三木氏の招聘に動いたのが谷原氏だ。
谷原氏は昨年、サウジアラビア政府系ファンドが出資する新たな高額賞金ツアーに出場する一方、選手会が企画した大会を欠場するといったトラブルがあった。
だが、国内と海外との掛け持ちをそもそも認めているJGTOが、谷原氏を全く擁護しなかったことも、亀裂を深めたとする見方がある。その結果、JGTOは青木派と反青木派の真っ二つに割れることになったのだ。
「青木会長には辞めていただく」。JGTOの理事会で三木氏はそう青木氏に退陣を迫ったとされる。これに対し、JGTOの理事会は三木氏の副会長解任に動く。三木氏は敗色濃厚とみたためか、2月末で辞任。前代未聞の電撃解任劇は回避されることになった。
一方、当初は三木氏と上田氏の両氏がセットで辞任するという両陣営痛み分けの折衷案があったものの、上田氏の辞任に対し、谷原氏が同意書を提出せず、上田氏は専務理事に留任した。激しい内紛は青木派に軍配が上がった形となる。
前出のゴルフ界の重鎮は、結果をこう解説する。「横(編集部注:三木氏ら)からちょっかいが入って『なんだか青木さんがかわいそうだよね』という方向になった」。つまり、青木氏への同情論が広がったことで、三木氏への支持は限られたというのだ。
“クーデター”は失敗に終わったとはいえ、お友達内閣との批判が上がるのは長期政権の弊害ともいえるかもしれない。そこで、青木氏が4期目の任期満了を迎える24年に向け、水面下で青木氏の後任を模索する動きがある。
実は、青木氏の後任にはある大物財界人の起用が取り沙汰されているという。関係者によると、その人物とは大和証券グループ本社名誉顧問の鈴木茂晴氏。鈴木氏は今年4月初め、岸田文雄首相やニトリホールディングス会長の似鳥昭雄氏らと、自らが理事長を務める名門コース「筑波カントリークラブ」でプレーするなど政財界に幅広い人脈を持つ(下表参照)。
そもそも青木体制に対する不満の一つが、「組織運営や経営があまりにも分かっていない」というものだ。超大手企業をトップとして率いた鈴木氏は、まさにJGTOにはこれまでいなかった経営人材といえる。
前出の関係者によると、鈴木氏の擁立に動いているのが、セガサミーホールディングス会長の里見治氏。青木氏の強力な後ろ盾でもある里見氏が、青木氏の“勇退”への花道を飾ろうと動いているようにも見える。ただし、鈴木氏が内紛の種がくすぶるJGTOのトップの座を快諾するかどうかは不透明だ。
これまでJGTOは、トヨタ自動車OBやNHK元会長の海老沢勝二氏といった外部人材をトップに起用したことがある。しかし、選手会などの支持が得られず、結局、ゴルファー出身の青木氏が待望の“救世主”として登板することになった経緯がある。
青木氏の就任から7年強がたつが、JGTOの抜本的な立て直しが図られたとは言い難い。こうした事態の打開のために、優秀な外部人材の活用は待ったなしともいえる。
難局を乗り切ったかに見える青木氏だが、谷原氏を中心に執行部への不信感はまだ根強い。8年目を迎えた青木路線の真骨頂が問われる1年になる。
Key Visual by Noriyo Shinoda,Graphic:Daddy’s Home