米紙に忖度されると思ってた?日本メディアとの違い

 発端は、岸田文雄首相が「TIME」のインタビュー取材を受けたことだ。首相肝いりの広島G7サミット前に、世界的メジャー誌で表紙を飾れたら格好のPRとなると思ったのだろうか。岸田首相は「TIME」の記者に、日本がいかに国際社会に貢献して、武力による現状変更に対して、西側諸国と連携して対処していくかを熱弁した。

 だが、ほどなくして発売された「TIME」に首相と官邸スタッフは腰を抜かすほど驚いた。

 表紙の岸田首相はニヤリと笑った“ちょい悪風”で、普段の記者会見で見せるような表情とかけ離れて、まるで悪代官のような印象なのだ。ただ、それよりも官邸が衝撃を受けたのは、そこにつけられたこんなタイトルだった。

<岸田首相は平和主義だった日本を軍事大国に変える>

 首相が熱弁を振るったこととまったく違うということで、慌てて外務省が「見出しと記事の内容があまりに違う」と「TIME」へクレームを入れる。その結果、既に世に出回っている紙媒体はそのままだが、電子版のタイトルは「岸田首相は平和主義だった日本に、国際舞台でより積極的な役割を与えようとしている」に修正されたのである。

 なぜこんなトラブルが起きたのか。キャスターの辛坊治郎氏がパーソナリティを務めるラジオ番組の中で指摘したことが、問題の本質を突いているので引用させていただこう。

<日本のメディアは、取材相手に忖度して記事を作ることがあります。また、独占インタビューなどの際には、ゲラチェックを取材相手にさせることもあります。しかし、欧米メディアは倫理上、そうしたことをしないという立場を取っていますから、記事が表に出るまで何が書かれているかは取材相手にも分かりません。日本のメディア取材に慣れている岸田首相は、そうした覚悟も含めてインタビューに慎重に答えたのでしょうか。そうでなかったのであれば、岸田首相は不用意だったということになります>(ニッポン放送 NEWS ONLINE 5月11日)

 辛坊氏の言うように、首相や官邸スタッフが普段接している日本のテレビや新聞というのは、G7前に単独インタビューを受けてやったら、こっちの主張をそのまま垂れ流して「事前検閲」させるのが当たり前だ。中には、露骨なヨイショもするケースもある。

 なぜ「権力の監視」とか言っている人たちがこんな体たらくなのか。