EV3500万台時代には
電池投資40~60兆円が必要

 下図が、30年にEV3500万台時代が到来した際に必要となる「電池容量」と「電池の投資額」の試算結果をまとめたものだ。この試算には、東海東京調査センターの杉浦誠司シニアアナリストの協力を得た。

 3500万台という見立ては、数多あるEV市場予測のうち平均的な水準のシナリオを採用した。30年には、世界の自動車市場1億台の約3割がEVで占められているという想定だ。

図表:2023年にEV3500万台が実現した場合に要するEV電池投資額
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 まず、EV3500万台を生産するにはリチウムイオン電池の生産能力2100GWhが必要となる。既存の生産能力510GWhを差し引いた、残り1590GWhもの生産能力を増強しなければならない。

 EV1台当たりに必要な電池容量を60kWh、1GWhあたりの投資額を160億円と仮定すると、電池製造に必要な投資額は25.4兆円となる。

 EV(車体)の製造に要する設備は1工場建設するのにざっと3000億円かかる。これを30年に83工場建設する(3割を新工場、7割を既存工場の改修で対等)と仮定すると、EV製造に16.1兆円を要する。

 結果として、電池製造投資25.4兆円とEV製造投資16.1兆円を合計して、総額41.5兆円もの投資額がかかることが分かった。

 ちなみに、欧州メーカーはEV販売台数のシナリオをさらに強気に見ている。2030年のEV生産台数の前提条件を3500万台から5000万台へ引き上げた場合、電池とEVの投資総額は65.7兆円となる。

 2030年には世界の自動車メーカーは40~60兆円もの巨額投資が必要となるということだ。しかもこの試算には、EVプラットフォームの開発費や電池材料に必要な資源投資額は含まれておらず、自動車メーカーが必要な投資はさらに跳ね上がる。

 仮に、世界の主要自動車メーカー10社がプラットフォーム開発を自前で行う場合、10社合計で10兆円規模の投資が要る。世界の自動車メーカーは50~70兆円規模の投資を覚悟しなければならないということだ。電池投資競争は異次元の領域に突入している。