決算発表順に、5月8日発表の三菱自の23年3月期決算は、売上高2兆4581億円で前期比20.6%増、営業利益1904億円で同2.2倍、当期純利益1687億円で同2.3倍となった(売上高営業利益率は7.7%)。営業利益、当期純利益ともに19年3月期以来4年ぶりに過去最高を更新した。

 これは、グローバル販売台数が半導体不足や海上輸送の遅れなどから前期比11%減の83万4000台にとどまったものの、北米事業の好調さや主力の東南アジアなどでの値上げが奏功したことに加え、円安による為替差益が追い風になった。この好業績を受けて未定としていた22年度期末配当を5円に決め、3年ぶりに復配する。

 三菱自は、燃費不正問題により業績が悪化する中で、16年に当時のゴーン元会長率いる日産から34%分の出資を受けて資本提携したが、20年3月期に257億円の最終赤字に転落した。19年6月に社長に就任した加藤隆雄氏の体制の下、再建に向けた構造改革プランが中核となる新中期経営計画「Challenge 2025」を進めてきた。この成果が前倒しされる形で黒字転換、もっと言えば最高益更新という結果につながったということだ。

 だが、その中でも今決算では、生産停止中のロシア事業で199億円、低迷する中国事業で105億円の特別損失を計上しており、大きな経営課題となっている。今期(24年3月期)業績見通しも売上高は10%増の2兆7000億円の増収に対し、営業利益は21%減の1500億円の減益を見込んでいる。

 つまり、三菱自の最高益更新による復配という一見好調そうな結果も、その内容を見るとまだ予断を許さない状況だということだ。

 新中計「Challenge 2025」でASEAN地域の成長と国内事業の採算改善に絞った選択と集中の構造改革は、ルノー・日産との3社連合における三菱自のASEAN・オセアニアの地域分担とPHEV(プラグイン・ハイブリッド車)に注力する位置付けと共通するものだ。

 三菱自は、長らく三菱商事出身の故・益子修氏が率いてきたが、日産の34%出資に次ぐ20%出資で、三菱商事の持分法適用関連会社にもなっている。かつてロシア現地子会社やインドネシア事業トップを経験した三菱自プロパーの加藤隆雄体制を、三菱商事がどう支えるのか、どう方向付けていくのかも注目されよう。