「あれ? いま何しようとしてたんだっけ?」「ほら、あの人、名前なんていうんだっけ?」「昨日の晩ごはん、何食べんたんだっけ?」……若い頃は気にならなかったのに、いつの頃からか、もの忘れが激しくなってきた。「ちょっと忘れた」というレベルではなく、「しょっちゅう忘れてしまう」「名前が出てこない」のが、もう当たり前。それもこれも「年をとったせいだ」と思うかもしれない。けれど、ちょっと待った! それは、まったくの勘違いかもしれないのです。
そこで参考にしたいのが、認知症患者と向き合ってきた医師・松原英多氏の著書『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』(ダイヤモンド社)だ。本書は、若い人はもちろん高齢者でも、「これならできそう」「続けられそう」と思えて、何歳からでも脳が若返る秘訣を明かした1冊。本稿では、本書より一部を抜粋・編集し、脳の衰えを感じている人が陥りがちな勘違いと長生きしても脳が老けない方法を解き明かす。

【91歳の医師が明かす】<br />認知症のリスクを高めてしまう…ごく身近な原因イラスト:chichols

脳は血管とともに老いる

【前回】からの続き 生涯現役医師を貫いて105歳で亡くなった大先輩・日野原重明先生も影響を受けたというウィリアム・オスラーという著名なアメリカの内科医は、「ヒトは血管とともに老いる」という名言を残しました。

血管は、全身に血液を巡らせるために欠かせない人体のインフラ(基盤)ですが、その全長は地球を2周以上する約9万kmに達するといわれます。

地下に埋まった水道管やガス管といった社会的なインフラなら、老朽化したところから交換していけばリフレッシュできます。しかし、血管はそういうわけにはいきません。

血管がボロボロになると……

水道管やガス管がダメージを受けると、水やガスの流れがスムーズでなくなるように、血管が古びてボロボロになると血液の流れが悪化します。

全身に37兆個もある細胞が必要とする酸素と栄養素は、血液によって運ばれますから、血管が古くなって血流が滞ると、細胞は満足に働けなくなります。

それが老化に直結するので、「ヒトは血管とともに老いる」というわけです。

血管の老化が脳の老化に直結

繰り返し触れているように、認知症も老化によって起こります。

血管が古くなり、血液の流れが悪くなると老化が加速して、脳の神経細胞がダメージを受けます。それによって認知機能が落ちてしまうのです。

脳の老化に直結する血管の老化とは、より具体的にいうなら「動脈硬化」です。

動脈の弾力が失われると……

心臓から身体の末端まで血液を運ぶ動脈は、しなやかで弾力性に富み、心臓のポンプ機能で押し出された血液を全身の隅々まで運んでくれます。

心臓から送り出された血液が、全身を巡って心臓に戻るまでの時間は、わずか50秒です。

本来はしなやかで弾力性に富んだ動脈が、弾力性を失って硬くなると、血液が流れにくくなります。そして、「血栓(けっせん)」という血のかたまりができて、詰まりやすくなるのです。

動脈硬化が引き起こす
恐ろしい病気

これが動脈硬化の恐ろしいところです。心臓の血管で動脈が詰まると「心臓病」、脳の血管で動脈が詰まると「脳卒中」が起こりやすくなります。

心臓病と脳卒中は、がんや老衰、肺炎とともに日本人の死因トップ5にランクインしています(出典:厚生労働省「人口動態統計」[2020年])。【次回に続く】

※本稿は、『91歳の現役医師がやっている 一生ボケない習慣』より一部を抜粋・編集したものです。