米国ではサービス価格を中心にインフレ高止まりが続いている。それゆえ、FRBの利上げが停止されるかどうかは微妙である。ただ、年後半には量的引き締め策の効果が表れ、株価は下落基調になるだろう。逆資産効果でようやくインフレが抑制されることになりそうだ。(SMBC日興証券 チーフ為替・外債ストラテジスト 野地 慎)
労働需給ひっ迫による
サービス物価高止まり
5月のFOMC(米連邦公開市場委員会)の議事要旨が公表された。
「もし経済が現在の当局者見通しに沿って展開するなら、今会合後のさらなる政策引き締めは必要ないかもしれないと幾人かの参加者は指摘した」と記された一方、「一部の参加者は、インフレ率を2%に戻すための進展が受け入れ難いほど遅い状態が続く可能性があるとの見通しに基づき、将来の会合での追加の政策引き締めが正当化される可能性が高いと発言した」との記述もあった。
5月FOMC終了後の会見を行ったパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は慎重派に属していたため、会見を受けた後の米国市場では5月での利上げ休止がコンセンサスとなっていたが、実は追加利上げを求める意見もあったことが確認された格好だ。
FRBのウォラー理事も「6月に利上げか見送りかはデータ次第」と話したが、直近のサービス業PMI(購買担当者景気指数)の良化(4月53.6→5月55.1、5月23日公表)を見る限り、そのデータは追加利上げの必要性を示唆している。
労働需給がひっ迫しているのもサービス業、フィリップスカーブの上方シフトを促したのもサービス業の需要超過であり、実際に高止まりしているのもサービス物価だからだ。
サービス業の景況感通りにサービス消費が強ければ、サービス業の賃金やサービス物価は容易には低下し難く、いよいよ6月の追加利上げの気運も高まったといえそうだ。
次ページ以降、今後のインフレ動向、これまでの金融政策の効果について分析していく。