修理できないようなら、
30万円は君に払ってもらうよ
あきらめたBは、夕方外出から戻ってきたA社長に自分がコーヒーをこぼしたせいでパソコンが起動しなくなったことを報告し、謝った。
「えっ、買って1週間しかたってないのに、もう壊しちゃったの? あちゃ~」
Bから詳細を聞いたA社長は頭を抱えた。Bは「すみませんでした」とひたすら謝り続け、「修理代は全部自分が払います」と言った。
しかしA社長は冷たく突き放した。
「修理って簡単に言うなよ。第一その状態では、修理できるかどうかも分からない」
「じゃあ、どうすればいいですか?」
「これからC社長に連絡して修理できるかどうか見てもらうけど、もしダメだったら故障した機種と同じの新品パソコンを買うしかないね。そうなったらパソコン代30万円は君に払ってもらうよ」
「30万円!」
「そうだよ。君の不注意で壊したんだから当たり前でしょ?7月支払い分の給料から全額引かせてもらうから、そのつもりでね」
A社長はさらに就業規則を取り出し、Bに見せた。
「ほら、『故意または重大な過失により、従業員が会社の備品を壊した場合、全額弁償すること』って書いてあるでしょ。これは私の気まぐれな判断ではなく、会社の決まりなんだよ」
「勘弁してください。給料がないと生活できません」
「大丈夫。先週B君には夏のボーナスで、基本給の2カ月分出したから。それを生活費に充てればいい」
Bは返す言葉もなくガックリとうなだれた。
修理できないなら、
同じスペックのパソコンを買う
その日の夕方、A社長はBが壊したノートパソコンを乙社に持ち込んだ。故障した理由を聞いたCは早速パソコンを分解してキーボードを外してみたが、コーヒーの中に入れた砂糖とコーヒーホワイトが基盤までかなり染み込んでいる。修理は無理だと分かったので、A社長はその場で同機種のパソコンを購入することを決めた。
「この間全部入れ替えたばかりだけど、仕事を遅らせるわけにはいかないから、仕方ない」
A社長の嘆きを聞いたCは、
「総務で使うんでしょう? そこまでハイスペックな必要はないよ。出費が負担なら、20万円の機種でも十分だ」
と提案したが、A社長は平然と言った。
「いや、いいんだ。壊した社員の給料から差し引いて全額弁償させるから。30万円のモノで頼む」
「えっ? 壊したパソコン代を全額社員に払わせるのはまずいんじゃないの?」
「どうして?」