弁護士や会計士、税理士といった士業の仕事は、ChatGPTの出現でどう変わるのか――。特集『日本再浮上&AIで激変! 5年後のシン・業界地図』(全16回)の#2では、『会社を救うプロ士業 会社を潰すダメ士業』などの著書があり、この道20年の士業コンサルタントである横須賀輝尚氏(パワーコンテンツジャパン代表取締役)が、士業の「5年後」を大展望。AIの本質を見極め、個人事務所が“大崩壊時代”を勝ち抜くための「正道」とは何かを伝授する。
士業ビジネスはChatGPTで
「大崩壊」となるのか?
この先、士業の世界を待ち受けるのは、二極化なんて生易しいものではない。弁護士や会計士、税理士といったほとんどの士業は、ChatGPTをはじめとした生成AIの台頭で「大崩壊」の瀬戸際に立たされる。
というのも、士業ビジネスのフロントエンド(編集部注:顧客との接点)の大半は「相談」だ。その相談業務の多くが、ChatGPTによって奪われ始めている。足元では、まだ回答精度の問題があり、ChatGPTへの相談によって、あらゆることが解決できるほどのレベルには至っていない。しかし、時間の問題だといえる。
何しろ、既に現場では、クライアントから顧問料の値引き要請が出たという事例もある。これからChatGPTに相談することが増えるため、士業に相談する機会が減るという理由からだ。
しかし、SNS界隈を見ると、士業関係者を取り巻く危機感はまだ低いように映る。現在のChatGPTの回答精度をあざ笑うかのような投稿。あるいは、「法律問題は個別性が高く、全く同様のケースはないのだから、相談業務がなくなることはない」というような安易な意見が目立つ。
こうした楽観的な見方は、AIの本質を見誤っていると言わざるを得ない。上記のような同業者の意見を見て安心しているようでは、「5年生存率」も危ぶまれる。断言してもよいが、今後の士業を待ち受けるのは「大崩壊」の未来図に他ならない。それほどまでに、ChatGPT出現のインパクトは大きいのである。
そんな新時代が到来する中で、士業はAIを「活用する側」に回らなければ生き残れないのかといえば、決してそう単純な話でもない。筆者は、むしろ中途半端なAIの活用は無意味だと考えている。
繰り返すが、これからの士業を待ち受けるのは二極化ではなく、大崩壊である。次ページ以降では、AI特有の「二つの本質」を分析した上で、士業専門の経営コンサルタントとして約20年活動してきた筆者の経験を踏まえ、士業「大崩壊時代」を勝ち抜くためのサバイバル術を伝授する。