政治家志望は毎年わずか数人
幹事長選挙「なるべく避けたい」

 早稲田大学雄弁会では各学年の部員は10人ほどだが、政治家志望は2~3人程度だという。残りは、公務員やメディア志望が多いという。以前は、卒業後すぐに政治家の秘書などになる部員も少なくなかったが、最近はあまりいないという。

 明治大学雄弁部だと、政治家志望の学生の比率はさらに下がる。1学年30人ほどの学生のうち、政治家志望と明言する学生はわずか1、2人にとどまる。雄弁部のある現役学生は「もともと政治には関心がなく雄弁部の存在も知らなかった。たまたま新歓で見掛けて入部した」と話す。

 政治家になるとの野心を隠さない学生が集ったひところの弁論部の様子と比べると隔世の感は拭えない。

 そして、弁論部の代表や幹事長を選出する激しい選挙戦も見掛けなくなった。選挙前に候補者を絞り込んだ上で、事実上の信任投票を実施する方法が主流だ。

 実際、ある弁論部の幹事長経験者は「自分ともう1人が立候補して選挙戦になったが、選挙後に部内に溝ができてしまった。選挙は避けた方がよい」と打ち明ける。

「赤じゅうたんで会いましょう」。かつて、早稲田大学雄弁会の卒業生の歓送会では、現役生からそんな言葉が贈られていたという。弁論部はまさに政治とは切っても切れない関係だったわけだ。しかし、弁論部の「現在」からは“政治臭”はほとんど消えてしまっている。

Key Visual by Noriyo Shinoda, Graphic by Kaoru Kurata

【訂正】記事初出時より以下の通り訂正します。

21段目:「1887年」→「1876年」

(2023年7月24日19:10 ダイヤモンド編集部)