「私は株主ですが、株主総会の招集通知を受け取った記憶がありません。どうなっているのですか?」
「私には帳簿を閲覧する権利があります。直ちに総勘定元帳を見せていただけますか?」
「失礼ながら、あなたが会社の財産を私物化している複数の証拠をつかみました。会社として代表取締役のあなたを追及しないのであれば、直ちに株主代表訴訟を行います」
これらはいずれも正当な権利の主張です。あなたがいかに経営権を確保しているオーナー社長であろうと、断ることも避けることもできません。何せ株主代表訴訟は、1株からでも可能なのです。ただし、単元株制度(注)の会社の場合は、1単元が必要で、単元未満株式だと提訴権限がありません。
分散し始めた株式は、それぞれの株主のもとで相続を繰り返し、どんどん細分化されていきます。今挙げたドラマのワンシーンのような事件など起こり得ないと考えるかもしれませんが、中には目ざとい人もいますし、世間にはその道のプロだっているわけです。
今はまだ業務上支障がないから、あるいは面倒だからといって現状を変えようとしないことには、それなりのリスクが伴っています。
そして、時間が経てば経つほど、相続が起これば起こるほど、株式は分散し、集約は難しくなります。できるだけ早く手を打ったほうがいいのです。
(注)単元株制度とは一定の株式を「1単元」と定め、1単元について1議決権とするが、1単元に満たない株式には議決権を認めないという制度。