入社1年目。この仕事、自分に向いてないような気がする……。まだ努力が足りないだけだろうか。それとも、いっそ転職してしまおうか。
今の仕事に、そんな迷いがある若手社員にこそ読んでもらいたいのが、『時間最短化、成果最大化の法則──1日1話インストールする“できる人”の思考アルゴリズム』だ。優秀なビジネスパーソンに共通する思考アルゴリズム(考え方の癖)が見事に解説されている。著者は、北の達人コーポレーション(東証プライム上場)社長・木下勝寿氏。ベストセラーとなっている本書は、多くの経営者やビジネスパーソンから評判の一冊だ。
そこで、本書からより深い学びを得ようと、インタビュー企画を実施。今回、本書を読み解くのは、企業現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント・横山信弘氏だ。最新刊『キミが信頼されないのは話が「ズレてる」だけなんだ』や衝撃のデビュー作『絶対達成する部下の育て方』などのベストセラー作家でもある横山氏は『時間最短化、成果最大化の法則』をどう読み解いたのか。連載3回目は、「『辞めたい』と思ったときに問うべき質問」をテーマに話を聞いた。(構成・川代紗生)

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「向いているかどうか」を判断基準にするリスク

──「とりあえず3年は働け」という考え方は古い! という意見を、最近よく見かけるようになりました。なかには、1年目で「合わないから辞める」と判断する人もいますよね。実際のところ、その仕事が「向いている・向いていない」はどのくらいの期間で判断するのが妥当だと思いますか?

横山信弘(以下、横山):そもそも、「向いている・向いていない」で考えないほうがいいと思います。

 「向いているかどうか」を判断基準にしてしまうと、のちのキャリア選びが苦しくなってくる可能性もあるかなと。

──そうなんですか! むしろ、「向いているかどうか」が一番大事、というイメージを持っていました。

横山:「人生100年時代」といわれていますが、いまは企業の寿命よりも、人間の寿命のほうがずっと長くなってきています。

 東京商工リサーチの2022年調査によれば、企業の平均寿命は23.3年。いまは大企業として名を馳せていても、5年後、10年後に、その会社が生き残っているかはわかりません。「終身雇用」はアテにしてはいられない。これからは、40代、50代でも転職するのが当たり前になっていくと思います。

 たとえば、私と同世代の50代前後のビジネスパーソンの中には、「俺、ITダメなんだよね」という人が多いのですが、もはや、そんなこと言っている場合じゃないですよね。

 「向いてないからやらない」と言っていたら、人生の行動レパートリーがどんどん狭まってしまいます。

 だから私は、若い人だろうと、ベテランだろうと、「向き不向き」はなく「慣れ不慣れ」で考えるのがいいと思うのです。仕事って、慣れてしまえば、だいたいのことはなんとかなりますから。

慣れないうちに転職を繰り返す「負のスパイラル」

──「向き不向き」はなく「慣れ不慣れ」ですか。

横山:もちろん、例外はあります。

 たとえば、「肉体的に向いてない」という場合。私は腰痛持ちなので、重いものを運ぶ仕事は難しいし、続きません。どれだけがんばったところで、腰の痛みには慣れないし、その仕事がラクになることはないですよね。

 あとは、SNSでフォロワーを増やす、インフルエンサーになる、芸能界でオーディションを勝ち抜きテレビに出るなど、「運の要素」が強いものに関しても、やはり、向き不向きはあります。慣れたからってどうにかなる問題ではありません。

 ですが、一般企業に勤めるビジネスパーソンなら、「慣れ」である程度はなんとかなります。だからこそ、「向き不向き」に重きを置きすぎて、選択肢を狭めてしまうのはもったいないのではないかというのが、私の考え方です。

──たしかに、最初は「絶対にムリ!」と思っていた仕事も、慣れてしまうと意外と楽しい、ということ、よくありますよね。

横山:近年は職場環境もどんどん改善される傾向にありますし、2030年、2040年と時が経つごとによりIT化が進み、社員が働きやすいシステムが整っていくと思うのです。

 そう考えると、意外とどんな職種でも、どんな業界でも、続けていれば仕事はできるようになるんじゃないかなと。

 だから、「向いてないから」という理由で辞めたくなったら、一度立ち止まり、「短期間では結果は出ないものだ」ということを加味して、考え直したほうがいいかもしれませんね。

 不慣れなうちは、結果は出せない。結果が出せないから、職場にもあまりなじめず、仕事がしんどい。しんどいから、「向いてないんじゃないか」と思えてくる。違うんです。

 「慣れてない」と「向いてない」をイコールにして考えたら、もったいないですよ。

──そうですよね。ずっと成長できないまま「向いている仕事」を探し続ける、という負のスパイラルに陥ってしまったら、本末転倒ですね……。

「どんな凡才でも10回目は必ず成功する」
焦る若手社員に伝えるべきこと

──よく考えたら、転職直後にバーンと結果を出せる人なんて、そうそういないですもんね。

横山:「とりあえず3年は働け」というのは、だいたいどんな職場でも、だいたいどんな人でも、3年続けていれば、ある程度は仕事に慣れてくるし、上司に指示された仕事でも結果が出せるようになってくる。

 だから、まずは仕事に慣れるまでがんばってみて、それから判断してみてもいいんじゃないですか、ということじゃないかと私は解釈しています。

 もちろん、医者など、特殊な職業であれば、慣れるまでにもっと時間がかかると思いますが、一般企業につとめるビジネスパーソンであれば、3年くらいが妥当じゃないかと思います。1年目、2年目だと、仕事を覚えるのに精一杯ですしね。もちろん、職場がブラックであるとか、即辞めるべきケースもありますが。

──仕事に慣れる前、入社1年目で辞めるというのも、もったいない気がしますね。

横山:もちろん、1年ですぐに慣れる人もいて、そういう突出した人がたまにいるからこそ、落ち込んでしまう、というケースもあります。

 同期のメンバーより自分の成長が遅いと、不安になりますからね。

 だから、会社側は、成長スピードは人それぞれだということをしっかり伝え、ケアしていかないといけないですよね。

 慣れるのにちょっと時間がかかるようでも、そこまで気にしなくていい。

 努力の仕方を間違えなければ、いずれ仕事はできるようになる。

 ただ、慣れるのに時間がかかっているだけですよ、と理解してもらうのが大事だと思います。

──では、「向いているかどうか」では選ばないほうがいい、となると……。結局のところ、働く場所って、どう選んだらいいのでしょう?

横山:短期的な視点ではなく、長期的な視点で探すのがいいと思います。

 私も完全に遅咲きで、花が咲くのにかなり時間がかかるタイプ。そういう人が、短期的な成果を期待しすぎると、「自分はダメな人間なんだ」「どこへ行ってもうまくいかないんだ」みたいに、自分自身に、よくないレッテルを貼ることになってしまう。

 『時間最短化、成果最大化の法則』にも「10回本気でやれば、誰でも1回成功するようになっている」という「10回に1回の法則」があります。ここには、こんなことが書かれています。

 最初から1回でうまくいくと思っていると、2、3回失敗するとショックが大きい。すぐ「もう無理」とあきらめてしまう。
 こんなとき、一喜一憂せず、「どんな天才でも最初の9回は失敗する」「どんな凡才でも10回目は必ず成功する」と淡々と10回続ける。すると10回目で必ずうまくいく。(P.71)

 だから、「どうせ慣れたらなんとかなる」と思って、自分という人間をじっくりと成長させてくれそうな会社を選ぶのがいいのではないでしょうか。

【ちょっと待って】「仕事、向いてない」と思ったら問うべきたった1つの質問
横山信弘
企業の現場に入り、営業目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の考案者として知られる。15年間で3000回以上のセミナーや書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。現在YouTubeチャンネル「予材管理大学」が人気を博し、経営者、営業マネジャーが視聴する。『絶対達成する部下の育て方』など「絶対達成」シリーズの著者であり、多くはアジアを中心に翻訳版が発売されている。