スバルは世界販売台数の7割が米国だ。中国事業については、かつて現地合弁先を探し検討を進めたものの結論が出せず、生産進出に至らなかった経緯がある。22年の中国での販売台数は1万台程度と、微々たる量だ。

 今回は、結果的にこれが幸いしたといえる。現状では最大かつ主力の米国市場におけるEVシフトに集中するとして、日本国内で進めているBEV専用工場建設計画(群馬・大泉工場で稼働予定)に続き、27年にも米国でBEV生産を始める計画を発表している。

 また、スズキは18年に現地の合弁企業「長安鈴木」を手放しており、中国の四輪事業からの撤退を早々と決断している。

 当時のトップ、鈴木修流経営の決断にあったのは「インドの生産基地拡大に経営資源を集中させる」ことだった。スズキは鈴木修氏の長期政権から鈴木俊宏社長体制へ移行が進んだ中、今期の売上高見通しを5兆円の大台に乗せている。インドでの生産を子会社マルチ・スズキに集約し、生産の拡大とともに効率化を進めて、中国を上回る世界最大の人口となったインドでの生産・販売体制の盤石化を図る。

 EV化を巡っては、中国に追随するかのようにここへ来てバイデン米政権もIRA法(インフレ抑制法)を22年夏に制定し、EV生産・調達の保護主義を鮮明にしている。日本車各社は、米中の二大国でのEV対応を迫られている。

 その中でも特に中国事業の見直し・構造改革は日本車各社にとって喫緊の課題となってきている。

 中国政府のEV自国企業優先の保護主義に加えて、中国経済の先行きの不透明感や地政学リスクなどもあり、中国ビジネスには確かに難しさもある。中国市場のウエートが大きいトヨタ、日産、ホンダは「存続」のためのテコ入れが急務の一方で、三菱自、マツダなどの中堅企業は「撤退」、スバルなどは「完全撤退」も視野に入れざるを得ない状況といえる。

 自動車メーカー以外でも帝人が自動車向け素材で中国事業からの撤退を発表しているが、グローバル戦略の中で、中国ビジネスを今後どう位置付けるかによって「存続」か「撤退」の経営判断も求められよう。

(佃モビリティ総研代表・NEXT MOBILITY主筆 佃 義夫)