特に、世界BEV販売でトップを走る米テスラを急追する中国現地メーカーのBYD(中国市場のBEV・PHEVのNEV販売では、すでにBYDがトップ)に象徴されるように、中国メーカーが力をつけてきており、逆に日本車のEV戦略の出遅れが中国市場で鮮明になってきている。
このため、日本車各社がそれぞれ中国事業の見直し、構造改革を迫られており、状況によっては中国ビジネスからの「撤退」も余儀なくされる事態にもなっている。
中国でNEVが拡大するも
値引き合戦でメーカーにダメージ
中国政府は、20年以降NEVを戦略産業として育成する方針の下、NEVに公的補助金支給や税優遇措置を行うNEV規制を導入した。これは、中国が世界最大の自動車市場の地位を確立する中で、自国企業のEVを中心とするNEVで世界覇権を握ろうとする、保護主義の姿勢を鮮明にしたものである。
しかし、中国自動車市場でNEVの販売台数が急激に伸びる一方、23年度に入り中国全体の景気が停滞する中でも、中国現地メーカーを中心にNEV投入の勢いはとどまらず、「値下げ合戦」の様相を呈する販売競争が激化した。
その結果、日本車各社の中国販売は苦戦を強いられ、ここへきて販売シェアも大幅にダウンするという“異変”が起きたのだ。
中国の乗用新車市場に占める外資系企業のエンジン車の割合は、23年上期に40%と20年から21ポイントも下がった。このため、日本車各社は中国戦略の見直しを迫られており、状況によっては「撤退」の決断をせざるを得なくなるケースもありそうだ。
23年度第1四半期で純利益1兆円超えを達成したトヨタですら、中国の変調で中国事業の見直し対応を迫られている。トヨタの4~6月の中国事業の営業利益は536億円、持分法投資利益は543億円とそれぞれ前年同期比で26%、32%の大幅な減少となった。トヨタは「中国はNEVが伸びる中で値下げ競争が激しく、対応していかざるを得ない」としている。