歴史小説の主人公は、過去の歴史を案内してくれる水先案内人のようなもの。面白い・好きな案内人を見つけられれば、歴史の世界にどっぷりつかり、そこから人生に必要なさまざまなものを吸収できる。水先案内人が魅力的かどうかは、歴史小説家の腕次第。つまり、自分にあった作家の作品を読むことが、歴史から教養を身につける最良の手段といえる。
直木賞作家・今村翔吾初のビジネス書『教養としての歴史小説』
(ダイヤモンド社)では、教養という視点から歴史小説について語っている。小学5年生で歴史小説と出会い、ひたすら歴史小説を読み込む青春時代を送ってきた著者は、20代までダンス・インストラクターとして活動。30歳のときに一念発起して、埋蔵文化財の発掘調査員をしながら歴史小説家を目指したという異色の作家が、歴史小説マニアの視点から、歴史小説という文芸ジャンルについて掘り下げるだけでなく、小説から得られる教養の中身おすすめの作品まで、さまざまな角度から縦横無尽に語り尽くす。
※本稿は、『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。

【直木賞作家が教える】<br />「読書はタイパが悪い」という勘違いのワケPhoto: Adobe Stock

教養のある人は格好いい

【前回】からの続き 私は、教養のある人が格好いいと言われる世の中であってほしいと望んでいます。

もちろんイケメンやスポーツができる人は格好いいですが、それと同じくらい教養のある人が評価されてもよいはずです。

教養を深める利点とは?

教養の利点は年をとっても高めることができ、かつ衰えを知らないところです。

本を読めば読むほど、教養は連鎖的に深まっていきます。だから、読み続ければ、必ずいいことが起きます。

映画を「倍速」で視聴?

ところで、歴史小説には大部の作品が多いので、手にとる前から「読む時間がとれない」「タイパが悪そう」と心配する向きがあります。

タイパとは時間対効果を意味する「タイムパフォーマンス」の略語。

若い世代にはタイパ至上主義が蔓延していて、映画を倍速で視聴したり、あらすじを聞いて満足したりする行為が日常化しています。

歴史小説はタイパがいい?

読んだことがない人からすれば、この上なく歴史小説はタイパの悪いコンテンツに思われるかもしれません。

しかし、本当に時間を有効活用したいなら、歴史小説ほど時間投資に良いコンテンツは、そうそうないと思います。

若いときに知の基礎体力をつけておかなければ、後になって息切れするのが目に見えています。

※本稿は、『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。