スマホ時代になって、長い文章が嫌われるようになった。そこでコピーライティングの第一人者、神田昌典氏25年の集大成『コピーライティング技術大全──百年売れ続ける言葉の原則』の中から、スマホ時代に対応した「適度な行間を取るテクニック」を抜粋して紹介する。
なぜ、商品開発段階で
LPをつくるのか?
LPは、できあがった商品・サービスに対してつくるのが通常だ。
しかし、実は我々は、商品開発の段階でLPをつくることがよくある。
商品開発がある程度進み、最終形がイメージできたら、その時点でLPをつくるのだ。
そうすることで、「PMMをどう設定するか?」を考え、それによって商品も改良していくことができる。
つまり、LPと商品開発を同時並行で行うのだ。
「顧客を創造するコピーライティング講座」誕生秘話
我々の舞台裏の作業を一部お見せしよう。
「顧客を創造するコピーライティング講座」誕生秘話だ。
この講座は、オンラインでの動画視聴とライブセッションを組み合わせたハイブリッド講座である。
この講座前に、ライブセッションのみで行っていた時期があり、それをベースに商品を開発した。
当初のコンセプトは、「マーケティング・コピーライター養成講座」で、60日間でコピーライティングをマスターすることをイメージしていた。
メインの訴求は「ライブ講座がオンラインで学べるようになった」である。
ライブ講座は活況だったので、オンライン化することで、直接来場できない人に訴求するのが狙いだった。
それをLPにしたのが次の事例である。
紙面の都合でファーストビュー(LPの最初に目に触れる部分)だけを掲載するが、実際には最後のCTAまでつくっている。
このLPから、コピーライティングのスキルを習得するベネフィットをもっと強調してみようとなった。
そのアイデアをLPにしたのが次のものだ。
これはコピーライティングのベネフィットを前面に出した形だが、逆に「コピーライティング」を前面に出さないほうがいいかもしれないということになり、つくったのが次のLPだ。
このLPを踏まえ、コンセプトを大きく変えることを思いついた。
それまでは「ライター養成」というアイデアだった。
だが、これだと、書くのが好きな人にターゲットが絞られ、マーケットが小さくなる。
そこで、「コピーライティング技術の習得」というアイデアに変更したほうが、マーケットは大きくなると考えた。
では、どんな「技術」として表現するか? ということになり、2人で議論した結果、「ずっと富み続けるために必要な顧客を創造する技術」にしようとなった。
最終的なLPが次ページのものだ。
次々とコンセプトが変わっていったので、LPと並行して、講座構成のイメージも変えていった。
当初は「ライター養成」で、60日間ガッツリやるイメージだった。
だが、「技術習得」に変えた関係で期間も30日に短縮、手軽な印象が出るようにした。
もし、講座自体を全部つくってしまってからだと、LPをつくる段階で違うアイデアが出ても修正するのは大変だ。
講座とLPを並行してつくると、その手戻りがない。
このケースでは、講座よりLPが先にできあがり、それに合わせて講座内容をつくっていった。
これを実行するには、すばやくコピーが書ける技術が必要なので、高度な作業となる。
LP全体を書くところまでいかなくても、少なくとも、新しい商品・サービスを開発する段階でPMM=「誰が・何をして・どうなった?」は並行して考えるべきだ。
そうすることで、商品・サービス自体を売れるようにつくり込むことができる。
ポイント
ここまでに述べてきたことをまとめるとこうなる。
1.コピーを研ぎ澄ます技術
●自分が書いたメッセージどおりの顧客が集まるので、表現やトーンに十分配慮する
●ベネフィットは、「その結果どうなる?」と何度も自問自答して掘り下げる
●話しかけるように書くために「ペルソナ」を設定する
●「顧客の頭の中にある言葉」を使う。「顧客の頭の中にある言葉」とは、顧客が使う単語や顧客の悩みや理想が言語化されたもの。グーグルなど検索エンジンの「サジェストキーワード」などデジタルツールを使うのも効果的
●コマーシャルインサイトとは、まだ言葉になっていない読み手の深層の欲求を言葉で表現する、究極の意外性
●人を動かす3大要素は「共感」「数値」「権威」
●型をマネるときは、アイデアをマネるのがポイント
●B to B向けのライティングでは、ターゲットとベネフィットを調整する
●書くスピードを上げるには、次の3つがポイント。
1.書きやすいところから書く、2.「33分33秒」で書く、3.校正は後でやる
●書く前に「ストーリーチャート」で構成の骨格をあらかじめ決めておくと、説得力のある論理展開ができる
2.納得感と説得力のある文章にする技術
●親近感を高めるには、「正当化」と「共通の敵」が有効
●「シズル感」を出すには、擬音語・擬態語を使う
●リズム感や勢いを出すには、「うまい、やすい、はやい」など、言葉を「3つセット」にして表現する
●行動しないデメリットを訴求する
●反論が出そうな部分の直後に「反論処理」をすることで、信頼感につなげられる
●顧客の声には、実名・写真・職業は最低限必要。さらに、見出しをつけたり強調したりして、パッと見てわかるように編集する
●顧客の声がない場合は、後で入れるか、正式に売り出す前に親しい人にお試ししてもらい、感想をもらう
●これから起こることをあらかじめ書いておく「フューチャーペーシング」を使うと、行動への安心感につながる
●価格が高いと思われるのを防ぐには、「リンゴとミカン」など、違うものと比べる技術が有効
●CTAの文言を自己宣言する形などに工夫することで行動が促進できる。また、CTAの位置は顧客が「その気」になった段階で出すのが効果的
3.文章をエレガントに仕上げる技術
●LP・セールスレターの最適な長さは、必要な情報を十分に伝えられる長さで、最も短いもの
●スマホ時代の編集技術は、次の5つがポイント。
1.改行位置に注意し、2.文章は短く、3.フォントでメリハリをつけ、4.画像を効果的に活用し、5.適度な行間を取る
●改行位置はコンバージョンに影響する。意味の切れ目に配慮する
●文章を短くするには、「読むより見る」感覚で編集する
●視認性の高いフォントを2~3種類使い分け、メリハリをつける
●画像を使うときは、文章の代わりに言いたいことが伝わるものを選ぶ
●行間は広すぎても狭すぎても見づらいので、適度な行間に配慮する
●文章は時間を空けて見直しながらブラッシュアップする
●他人に意見を求めるときは、ターゲットに近い人に聞く
●一人でできる効率的な校正技術は「音読」
●「PMMセルフチェックシート」でLPを自分でチェックする
4.特別な技術
●LPをつくりながら商品開発をすると、売れるコピーと商品を同時につくることができる
(本原稿は、神田昌典・衣田順一著『コピーライティング技術大全──百年売れ続ける言葉の原則』からの抜粋です)