元トップスターらも語る宝塚の軍隊カルチャー

 旧日本軍、自衛隊、さらには海外の軍隊の例を出すまでもなく、軍隊内におけるいじめやハラスメントの事実確認は困難を極める。軍事作戦は「上」の命令に、「下」は絶対服従しなければ遂行できない。つまり、いじめやパワハラをしていた「上」から「死んでも口を割るな」と、くぎを刺されたら拷問されても沈黙を守るのが軍隊だ。

 というと「おいおい、いくら厳しい縦社会だからって“女の軍隊”はさすがに言い過ぎだろ」と思う人もいるかもしれないが、これは何も筆者が勝手に命名したわけではなく、この組織で生きてきた人々や関係者が口々にそう言っている。それを象徴するのが、元雪組男役トップスターの杜けあきさんが、宝塚100周年の記念公演で、報道陣に対して言った言葉だ。

《宝塚時代を振り返った杜は、「全員に下積みがあるし、お掃除の一から始める。立つ姿勢やお辞儀の角度も全て決められているので、女の軍隊に等しいです」と笑い、「朝5時に起きて行う毎日の掃除がきつかった」と当時を懐かしんでいた》(オリコンニュース、2014年5月18日)

 しかも、もっと言ってしまうと、これは比喩ではない。2017年4月19日のデイリースポーツの「宝塚音楽学校“鉄の掟” 校則ではなく生徒らが自ら生み出す 自衛隊で1日訓練も」にはこんな説明がある。

「入学前のオリエンテーションの一環として、自衛隊での1日訓練もその一つ。例年、学校に近い伊丹駐屯地で行われ、歩行などを徹底的に教わる」

 軍隊式の人材教育を取り入れて、OGたちも「女の軍隊」だと認めている。これを「女の軍隊」と呼ばずしてなんと呼ぶのか。

 実際、軍隊カルチャーは随所にある。今はなくなったそうだが、宝塚音楽学校の「美談」として有名だったのは、下級生は目の前に阪急電車が通るたび、上級生が乗車しているかもしれないからお辞儀をするというものだ。考え方は、軍隊の「敬礼」とほとんど同じだ。こちらも「下」の人間が「上」の人間の姿を確認すると、どこであっても背筋を伸ばしてやらなくてはいけない。

 このように組織として旧日本軍や自衛隊と同じ性格なのだから、同じ問題が起きるのは当然だ。それはいじめやパワハラ、そして、それらの行為の隠ぺいである。