休日に「なんとなくダルい」と感じている人は多いのではないだろうか。もし、あなたがスマホなどのスクリーンデバイスを眺めながら1日を過ごしているなら、要注意だ。なぜなら、画面を見ている限り、脳は休めないからだ。そして、脳が疲労している限り、肉体も回復しない。その理由について、執筆家・四角大輔氏の著書『超ミニマル・ライフ』の内容をもとに紹介する。(構成:神代裕子)

超ミニマル・ライフPhoto: Adobe Stock

スマホの登場により、生活が激変

 2008年にiPhoneが発売されたのを機に、日本にスマホが一気に普及した。

 今では私たちにとって欠かせないツールであり、人との連絡だけでなく、仕事も動画鑑賞もゲームも読書も、実にさまざまなことがスマホ一つでできるようになった。

 自分を「スマホ中毒だ」と思っている人も少なくないだろう。もちろん、筆者もその一人だとしっかり自覚している。

 休みの日も、朝起きてからスマホを片手にベッドの上でゴロゴロし続け、あっという間に昼なんてことも少なくない。

 さまざまな書籍でも「スマホは脳に悪い」と言われているため、「ダラダラとスマホを触るのはやめないといけないな」と思いながら、なかなか手放せないでいる。

 しかし、本書によると、スマホによって悪い影響を受けるのは脳だけではないというのだ。

脳の疲労が肉体疲労につながっている

 私たちは、SNSやゲーム、動画や友人とのチャットで、ストレスを発散しているつもりでいる。

 しかし、四角氏は「それは一時的な感覚。その行為はただ脳を激しく疲れさせるだけ」と指摘する。

 さらに、肉体疲労の大半は脳疲労が原因だ。そのため、いくらベッドで体を休めていても、残念ながら実質的には体の疲労感の解消にもならないというのだ。

 確かに、1日スマホを眺めた結果「あー!スッキリ!」という感覚になったことは、筆者もない。

 その理由を四角氏は次のように述べる。

何かに注意を向けたり、目の前のことに集中する時、脳全体ではなく特定の領域のみが強くアクセルを踏む「実行ネットワーク」という活動状態に入る。まさに、何かを意識的に実行すべき時や、仕事の場面で最も求められるモードである。(P.104)

 スマホを扱っている時はただ画面を見ているだけにすぎないが、そこに送られてくる情報は膨大だ。

 そのため、ドーパミン(興奮ホルモン)が過剰分泌して、交感神経優位(緊張モード)になってしまう。

たとえ寝転んでいても、リラックスしようとしても、脳内で「実行ネットワーク」が勝手に起動して脳は休めない。(P.105)

 そして、前述した通り、肉体疲労の大半は脳疲労が原因であるため、ぐったりしてしまうのだ。

脳の疲労を回復する「デフォルトネットワーク」とは

 視点を変えれば、「脳をしっかり休ませれば、肉体疲労を軽くできる」ということだ。

 スマホを見ている時の脳の状態である「実行ネットワーク」と反対に、脳がアイドリング状態に入った状態のことを「デフォルトネットワーク」と呼ぶ。

「実行ネットワーク」で酷使した部位の回復モードであり、緊急時に再び「実行ネットワーク」へ移行してパフォーマンスを発揮すべく、脳が待機している状態だ。
この時、脳の一部ではなく全体が活性化しているのだが、人生に感謝したり、深い幸福を感じている時も、同じように脳全体がバランス良くつながっていることがわかっている。(P.105)

 この「デフォルトネットワーク」の時間を多く作り出すことで、脳の疲労がとれ、肉体疲労も軽減するのだ。

 そのために必要なのが、「可能な限り数多くのオフラインの時間を作り出すこと」と四角氏は語る。

 決して、ダラダラとスマホをいじったり、動画やゲームに明け暮れたりしてはいけないのだ。

デジタルデトックスを意識的に取り入れて

 また、「デフォルトネットワーク」では「判断力」「記憶力」を担う領域が特に活性化するという。さらに、「創造力」「洞察力」「共感力」までもが向上するといった研究結果が出ている。

 逆にいうと、スマホ依存症、ゲームや動画中毒の人は、これらの大事な能力を低下させてしまっているということだ。

 私たちは、スマホという便利なツールを手に入れたことで、何時間でもお金をかけずに楽しめるようになった。得られる情報も、スマホ登場以前と以後では雲泥の差だ。

 同時に、脳を休ませる時間が劇的に減り、常に脳が稼働している状態を作り出してしまっているのだ。四角氏はこの状態を「人体にとっての異常事態」と指摘する。

 そんな情報ノイズ社会の中で生きる私たちが、スッキリとした頭と体を手に入れ、自分の脳の能力を最大限に生かすためには、デジタルデトックスをする時間を意識的に取り入れていく必要がある。

「休日を丸1日オフラインにするのが不安なら、まずは細切れでいいので1日に何度か意識的にネットを断ってみよう」と四角氏は提案する。

体がなんとなく重かったり、心がザワザワする時、5分でもいいのでスマホも何も持たず手ぶらで散歩してみよう。それだけで驚くほどスッキリする。(P.110)

 理由のない慢性的な疲れに悩まされている人がいるならば、彼の勧めに従い、スマホの電源を落としてみるのはいかがだろうか。

 思わぬスッキリ感が翌日に待っているかもしれない。

(本記事が紹介する本書該当箇所の内容は、湯本優氏[株式会社cart CEO、医師、医学博士]、三輪桜子氏[医師/神宮前統合医療クリニック院長]の監修のもとで執筆されたものです。)