女性活躍を促す要素となるSO制度

──スタートアップで女性の活躍を促すためにもSO制度は有効でしょうか。

会社によって違いはあるのですが、SO制度の課題が女性社員の活躍にも影響しているという話もあります。SmartHRで社員にアンケートを取ったところ、4割ぐらいしか自分のSOの価値を把握していなかったということは前編でも述べました。その時、私がとても気になったのが、特に女性社員から関心が薄いコメントが目立ったことでした。ある人の場合は、行使すれば1000万円以上の株を得られるくらいのSOのポイントを持っているのに、「100万円か200万円かわからないです」と言われて、あまりの認識の違いに大変悲しくなってしまったほどです。

なぜ、このようなことが起きてしまうのでしょうか。SOのベスティングがIPO起算だった場合は「IPOからさらにX年以上在籍しないと失効する」ということになり、自分のライフステージが変わる可能性があります。このため、魅力だと感じにくくなるのではないかと推測しています。エンジニアの人たちが「長年同じ会社にいることはまれなので、SOは無価値だ」とつぶやいているのをTwitterで見かけたことがあるのですが、それに近い感覚なのではないかと思いました。

一方、野瀬さん(宮田氏のNstock設立表明後に参画した元メルカリの野瀬梓紗氏)に前職のメルカリでの話を聞くと、むしろ女性の方がSOに対する関心が強かったそうなので、一概に「女性だから関心がない」とは言えないようです。メルカリの場合は「自分の資産やキャリアを自分で何とかするという考え方の女性が多く、金融リテラシーも女性の方が高くて質問も多かった印象」と聞いています。

また、出産休暇、育児休暇中にSOをどう取り扱うかを会社がきちんと決めているかどうかも重要だと思います。産休中、育休中もベスティングの時間がカウントされるような制度であれば、社員は会社に対してポジティブな印象を持ちやすくなります。産休・育休を会社がサポートするという姿勢を示し、社員にとってのダウンサイドリスクをなくす思想に基づいてSOを設計することで、社員の意識も変わっていくと思います。

海外人材をSOで確保するための高いハードル

──人材獲得の面では海外からの人材確保では株式報酬が必須とも聞きます。

海外から人材を確保するには、やはり株式報酬がなければ難しいとメルカリやラクスルの方からはよく聞いています。

その際の課題は2つあると思います。1つはまず、株式報酬の量が少ないこと。前編で挙げましたが、ソフトバンクで13億円をあの社員数で割ろうとしても、とても割れません。